朝日日本歴史人物事典 「空海の母」の解説
空海の母
奈良末・平安初期の空海の母。阿古屋御前,あこう御前または玉依御前とも呼ぶ。讃岐国(香川県)阿刀宿禰真足の娘で佐伯直田公の妻。息子の空海に会うため,女人禁制の高野山に登ったところ,雷鳴がとどろき,火の雨が降ったので,空海はやむをえず山麓の慈尊院に住まわせ,没後は廟所にしたと伝える。同様の伝承は吉野山,立山,白山などに共通して存在し,霊山に女性が登ると神罰があると思われていたことを物語る。慈尊院は女人高野と呼ばれて女性の信仰を集めて安産や授乳祈願の寺となっている。<参考文献>柳田国男「老女化石譚」,日野西真定「玉依御前考」(『伊藤真城・田中順照両教授頌徳記念仏教学論集』)
(西口順子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報