筋肉と神経のつながりの部分に異常が生じ(神経筋接合部異常)、筋肉の力が弱くなって疲れやすくなる病気です。疲れると症状が悪化し、休息すると症状が改善します。
さまざまな症状が現れますが、症状が眼だけの場合を
ニコチン性アセチルコリン受容体というところを標的として、自己抗体が攻撃することによって起こる自己免疫疾患と考えられています。本質的には、胸腺の異常が根本にある自己免疫疾患と考えられています。
筋無力症は、
筋無力症では、最初に外眼筋が障害されやすいので、60~70%の人が
眼の症状の日内変動(1日のうちで程度が変わる)や動揺が、3分の2の患者さんにみられます。3歳以下にひとつのピークがあるので、
なお、全身型の症状については重症筋無力症を参照してください。
筋無力症は、眼筋型から全身型へ移行したり、
簡単な方法として、眼瞼下垂に着目してリッドウィッチ(下方から上方へ眼球運動させると、停止した眼瞼が疲労して一度下がり、またピクッと上がる現象)を観察する方法や、上方視1分間試験(疲労誘発試験)があります。
神経筋接合部に刺激を与えるテンシロンテストで、症状が1分以内に改善すれば、神経筋接合部の異常がわかります。さらに、血清中の抗AchR抗体価が高値(0.5nmol/ℓ以下で正常)であれば、筋無力症と確定します。くわえて、CT検査で胸腺腫の有無を必ず確認します。反復刺激試験によってワニング現象といわれる筋肉の興奮が減少することの確認も重要です。
眼筋型では、抗コリンエステラーゼ薬(メスチノン、マイテラーゼ)を第一選択として、効果がなければステロイド薬を用います。
小児では、弱視の発生に注意しつつ、弱視治療も並行して行う必要があります。
全身型の場合は胸腺摘出術が必要になり、神経内科・胸部外科で行われます。
日内変動のある眼瞼下垂に気づいたら、眼科または神経内科・胸部外科を受診し、原因について診断を受け、適切な治療を選択することをすすめます。
松下 賢治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
重症筋無力症のこと。神経からくる刺激が神経と筋の接合部において伝わりにくくなるため、筋肉を使っているうちに力が入らなくなり、休むとふたたび力が入るようになる疾患をいう。
[里吉営二郎]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…若い成人女性に多く,随意筋が疲れやすく,動作を反復持続することが困難となり,ついには麻痺を呈する疾患。疲労や麻痺は休息によって回復する。難病の一つ。とくに眼瞼下垂,眼球運動の障害,構音障害,嚥下障害を起こしやすい。症状に悪化と軽快の波があり,1日のうちでも,朝は障害が軽く,夕方に向かうにつれて症状が強くなる。筋電図では,徐々に活動電位が低下する減衰現象がみられる。症状は抗コリンエステラーゼ剤の使用によって軽快することから,この疾患の診断にも利用される。…
※「筋無力症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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