米欧回覧実記(読み)べいおうかいらんじっき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「米欧回覧実記」の意味・わかりやすい解説

米欧回覧実記
べいおうかいらんじっき

岩倉使節団の公式報告書。久米邦武(くめくにたけ)編により、全100巻、5編5冊、1878年(明治11)、太政官(だじょうかん)記録掛刊行、東京博聞社より出版。本文合計2110ページ、地図10、図版314を挿入し、アメリカ、イギリス、フランス、ベルギーオランダプロシア、ロシア、デンマークスウェーデン、イタリア、オーストリア、スイス12か国回覧の見聞とウィーン万国博覧会の模様、歴訪中止のスペイン、ポルトガルの略説およびヨーロッパ総論、さらに地中海スエズ運河、東南アジア、中国など、帰航に際して立ち寄った地域の記事などがある。宗高(むねたか)書房の復刻版(1975~76)のほか、岩波文庫版(1977~82)があり各冊に付された「解説」が詳しい。

田中 彰]

『田中彰校注『特命全権大使米欧回覧実記』全5冊(岩波文庫)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「米欧回覧実記」の解説

米欧回覧実記
べいおうかいらんじっき

1871~73年(明治4~6)欧米諸国を視察した岩倉遣外使節団の見聞記録。正式には「特命全権大使米欧回覧実記」。5編100巻。随行した久米邦武が執筆・編修。78年太政官から刊行,博聞社発売。使節団が訪問した米欧12カ国と復路に寄港したアフリカ・アジア各地の見聞が克明に記されている。明治初期の異文化接触の貴重な史料。「岩波文庫」所収

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の米欧回覧実記の言及

【岩倉使節団】より

…この間,約1年10ヵ月,アメリカ,イギリス,フランス,ベルギー,オランダ,ドイツ,ロシア,デンマーク,スウェーデン,イタリア,オーストリア,スイスの12ヵ国を回覧した(大久保,木戸は途中で帰国)。この公式報告書が,太政官少書記官久米邦武編修の《特命全権大使米欧回覧実記》(5編100巻,1878刊。岩波文庫所収)である。…

【ナポリ】より

…ナポリには早くから多くの旅行者が訪れ,旅行記を残しているが,それらに共通しているのは風光明美の地であることと街なかが乱雑に汚れていること,それにこの地の民衆が明るく快活でいわば祭りのモティーフにあふれているとする印象である。日本からは1873年に明治政府の岩倉使節団がナポリを訪れ,景勝の地ではあるが,12ヵ国の欧米諸都市を回ったなかで,ここほど〈清潔ニ乏シク,民懶ニシテ貧児ノ多キ所ハナシ〉と《米欧回覧実記》に悪印象を記している。岩倉使節団はナポリの民衆の怠惰と貧しさを強調するあまり,彼らがそのなかで明るさ,陽気さを保ち生活を楽しんでいる姿を見落としてしまったといえる。…

※「米欧回覧実記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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