改訂新版 世界大百科事典 「粉末鍛造」の意味・わかりやすい解説
粉末鍛造 (ふんまつたんぞう)
powder forging
焼結機械部品などの焼結体には一般に空隙が残留しているため,その機械的性質は溶解・鍛造法で作ったものに比べて劣る。そこで空隙を完全につぶして高密度の焼結体を得るため,焼結体に対して熱間鍛造の処理を施す場合がある。この処理を粉末鍛造または焼結鍛造sinter forgingという。この技術は第2次世界大戦中に登場し,1960年代後半から70年代にかけて活発に研究が行われた。現在,この技術を用いて,アメリカ,日本などにおいて農業機械部品,自動車部品などが生産されている。焼結体(プレフォーム)の鍛造方法には大別して2通りある。その一つは,プレフォームとして形状が最終製品のそれとほぼ同じものを用い,鍛造時にあまり塑性変形させない方式であり,他の一つは,プレフォームとして形状が簡単で金型の内径よりも小さいものを用い鍛造時に大きな塑性変形を生じさせる方式である。後者のほうが製品の性質は優れるが,高価な金型の寿命が短くなるので,いずれの方式をとるかは部品の形状,要求特性に応じて決められる。普通の鍛造法に代わって焼結鍛造法を用いることの利点としては,材料歩留りの向上(50%→90%),切削加工の省略,鍛造回数と金型数の減少(2~4→1),工程数の減少に伴う人件費の削減,製品の寸法精度の向上,生産現場の環境の良好性,などが挙げられる。
執筆者:林 宏爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報