精神自動症(読み)せいしんじどうしょう(その他表記)automatisme mental[フランス]

改訂新版 世界大百科事典 「精神自動症」の意味・わかりやすい解説

精神自動症 (せいしんじどうしょう)
automatisme mental[フランス]

フランス精神医学で用いられる概念で,クレランボー症候群ともいう。G.G.deクレランボー統合失調症思考奪取思考吹入,させられ体験,妄想気分,幻聴などに相当する症状を,意識や意志と無関係に精神活動が起きる現象として精神自動症とした。これらの幻覚,妄想,思考障害は実際には患者の精神内界で起きる精神現象であるが,患者には外部から他者によって操作され,押しつけられたと感じられる結果,二次的に被害妄想を生ずるようになる。彼は慢性妄想疾患の成立機序を,この二次的な被害妄想の結実から説明した。この病理を彼は脳の器質的あるいは中毒性の障害に求めたが,彼の器質論的解釈にはその後,クロードH.Claude,H.エーらの多くの反対がある。彼らは心的水準の低下によって自我統制が低下し,無意識的機能のうちにあった心的機制が自我の統制を離れて意識化され,自属所属感がないために外界に定位された現象だと主張した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の精神自動症の言及

【クレランボー】より

…法律学,ついで医学を学び精神科医となったが,若いころから芸術全般に関心をもち,民族学の造詣も深かった。パリ警視庁特別医務局に在職当時(1920‐33),同所でなされた講義と鋭い臨床観察に基づいた精神病理学説,とりわけ〈精神自動症automatisme mental〉の概念によって名声を博した。彼は慢性幻覚精神病の症状分析から,その基本にあって自発的,機械的に生ずる現象を精神自動症と名づけ,各種の幻覚,考想化声,先行思考,作為体験などを説明したが,とりわけ幻覚や妄想に先行する感情的色調を欠いた中性的性格の小自動症を重視した。…

【クレランボー】より

…法律学,ついで医学を学び精神科医となったが,若いころから芸術全般に関心をもち,民族学の造詣も深かった。パリ警視庁特別医務局に在職当時(1920‐33),同所でなされた講義と鋭い臨床観察に基づいた精神病理学説,とりわけ〈精神自動症automatisme mental〉の概念によって名声を博した。彼は慢性幻覚精神病の症状分析から,その基本にあって自発的,機械的に生ずる現象を精神自動症と名づけ,各種の幻覚,考想化声,先行思考,作為体験などを説明したが,とりわけ幻覚や妄想に先行する感情的色調を欠いた中性的性格の小自動症を重視した。…

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