改訂新版 世界大百科事典 「精神自動症」の意味・わかりやすい解説
精神自動症 (せいしんじどうしょう)
automatisme mental[フランス]
フランス精神医学で用いられる概念で,クレランボー症候群ともいう。G.G.deクレランボーは統合失調症の思考奪取,思考吹入,させられ体験,妄想気分,幻聴などに相当する症状を,意識や意志と無関係に精神活動が起きる現象として精神自動症とした。これらの幻覚,妄想,思考障害は実際には患者の精神内界で起きる精神現象であるが,患者には外部から他者によって操作され,押しつけられたと感じられる結果,二次的に被害妄想を生ずるようになる。彼は慢性妄想疾患の成立機序を,この二次的な被害妄想の結実から説明した。この病理を彼は脳の器質的あるいは中毒性の障害に求めたが,彼の器質論的解釈にはその後,クロードH.Claude,H.エーらの多くの反対がある。彼らは心的水準の低下によって自我の統制が低下し,無意識的機能のうちにあった心的機制が自我の統制を離れて意識化され,自属所属感がないために外界に定位された現象だと主張した。
執筆者:石黒 健夫
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