糖原病II型

内科学 第10版 「糖原病II型」の解説

糖原病II型 (Pompe病)(糖原病(グリコーゲン病))

(2)糖原病Ⅱ型(Pompe病)
病因
 ライソゾーム内のα-グルコシダーゼ(酸性マルターゼ)の欠損によって生じる.本酵素はGAA遺伝子によってコードされている.
病態生理
 全身組織の細胞内ライソゾームにグリコーゲンが蓄積して,細胞・臓器障害を引き起こす.糖原病であるとともに,ライソゾーム(蓄積)病でもある.エネルギー源としてのグリコーゲン利用には支障をきたさない(図13-2-36).
臨床症状
1)乳児型:
生後数カ月以内に,体重増加不良,筋緊張低下を伴う重篤な(心)筋症,心不全,呼吸不全を呈する.心,舌,肝などの臓器腫大が認められる.無治療の場合,1~2歳までに死亡する.
2)小児型・成人型:
緩徐に進行する筋力低下(骨格筋のみ)を認める.しばしば肢帯型筋ジストロフィとの鑑別が必要.
検査成績
血液像で空胞化したリンパ球を認める.筋原性にAST,LDH,CKなどが上昇.胸部X線で心肥大所見.心電図ではP-R間隔の短縮
QRSの増高・左軸偏位,心エコーでの心室壁肥厚などの異常を認める.
診断
 尿中オリゴ糖分析で病的なパターンを認める.酵素活性測定(白血球,線維芽細胞,筋,肝)で確定診断される.遺伝子変異解析も行われる.
経過・予後
無治療の場合,乳児型の生命予後は不良である.
治療
 アルグルコシダーゼ・アルファによる酵素補充療法を早期に開始することで,生命予後が大きく改善される.早期発見・早期治療のために,乾燥濾紙血を用いた本症の新生児マススクリーニングが台湾や米国で試行されている.ワクチンなどによる呼吸器感染症の予防も必要である.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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