改訂新版 世界大百科事典 「経営委任」の意味・わかりやすい解説
経営委任 (けいえいいにん)
企業の経営を他人に委任することであるが,その中には,経営を委任された営業に基づく損益が受任者側に帰属する類型(狭義の経営委任と呼ばれる)と,損益が委任者側に帰属する類型(経営管理と呼ばれる)の2類型があるといわれている。いずれの形態も委任された営業を傘下に収めてコンツェルンを形成するなど企業結合の目的で行われることが多いが,日本ではその実例はあまり多くない。経営委任は当事者間の委任契約に基づいて有効に成立しうるが,株式会社,有限会社においては,経営の全部を委任する場合は,その会社における営業のあり方に重大な影響が及ぶので,株主総会,社員総会の特別決議を経ることが有効要件とされている(商法245条1項2号,有限会社法40条1項2号)。決議反対者には株式(持分)買取請求権が認められている。また,独占禁止法上は,公正な競争の維持という観点から,合併に対する制限と同様の趣旨で,経営委任についても制限を定めている(独占禁止法16条4号)。
執筆者:山下 友信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報