複数の企業が意思決定を全面的ないしは部分的に統一するために結合すること。独占利潤の獲得または企業の合理化を目的として形成される。結合の組織的形態は意思決定の統一化の必要性の程度等に応じて多様である。その方法により,企業合併(合併),企業連携(役員兼任等),企業協定(カルテル等)に分けられる。具体的には,カルテル(ドイツが有名),シンジケート,トラスト(アメリカが有名),コンツェルン等の形態がある。
会社法上,企業結合の明確な定義はなく,各種の規制目的に応じて企業結合概念を理論上明らかにしなければならないが,合併以外の場合(狭義の企業結合)が企業結合の問題として論じられることが多い。その場合,企業結合とは複数の企業が法的独立性を維持しながら,資本参加,役員兼任,取引関係その他の契約関係を通じて,部分的または全面的にその経済的独立性を喪失して一体化することということができ,具体的には,株式相互保有関係(商法241条3項),親子関係(211条の2-1項),営業譲渡(〈営業〉の項参照)等の企業契約関係(245条1項)にある会社は企業結合関係にあるといえる。
会社の親子関係は株式会社制度(資本多数決制度)を利用した企業結合形式であって,子会社を吸収合併する場合と同様の経済的効果を享受しつつ,子会社の法的独立性を利用するものである。このような企業結合関係のもとでは,その経済的支配従属関係に基づき,市場原理を基礎とする公正な取引がなされず,会社債権者および少数株主の利益が害される危険があり,特別の法的規制が要請される(〈親会社・子会社〉の項参照)。
企業結合関係にある会社,とくに,親会社の財務・収益状況を正確に把握するためには,企業結合全体の連結計算書類を作成する必要がある。証券取引法に基づき,公開会社は持分法による連結財務諸表を作成・公示しなければならないが,株式会社一般にはこの義務はない(〈連結決算〉の項参照)。営業報告書において,会社の親子関係その他の重要な企業結合の状況が開示されるにすぎない(計算諸類規則(略称)45条1項)。
執筆者:森本 滋
アメリカのアンチ・トラスト法(反トラスト法)は,結合参加企業の独立性の態様に応じて,ゆるい結合(カルテル等)とかたい結合(トラスト)とを区別し,法的取扱いを区別する。
法的取扱いが区別されるのは,結合の形態と目的に関してある程度の類型化が可能であることによる。すなわち,企業が異なる意思決定主体との間で全面的ないしは部分的に意思決定を統一しようとするのは,いずれにしてもそれによって利潤を増大するためなのであるが,その方法には,市場における競争を排除し,市場集中を実現して独占的利潤を獲得することによるものと,結合による合理化の利益を実現することによるものとがあり,ゆるい結合の目的は定型的に前者であることが多く,かたい結合の場合は後者をも含むことが多かったのである。前者に対してはアンチ・トラスト法は厳しい評価をし,ほとんどの場合に当然違法の扱いをなすが,後者に関してはその競争制限効果をケース・バイ・ケースに四囲の状況に照らして判断するというアプローチ(条理の法則の適用)がなされるのである。なおこのほかに特定の市場における集中度の増大ではなく,一般的な経済力の増大を目的とする結合もあり,民主政治の確保といった観点等から,この種の結合に規制が加えられる例も多い。
日本の独占禁止法も,母法たるアメリカのアンチ・トラスト法の考えを引き継いで,カルテル,私的独占,市場集中を実現する合併,営業の譲受け,役員兼任,株式保有を禁止し,取引段階を異にする企業間の結合も,不当な拘束条件付取引と判断される場合にはこれを禁じている。なお日本独自の企業結合規制として,一般集中防止のために,持株会社の全面禁止と大規模会社の株式保有の総量規制の制度があった。しかし,戦後の財閥解体の経緯を受けた日本の独占禁止法の,ある意味で,シンボルとも考えられた持株会社の設立自体の禁止も,1997年の改正法によって廃止された。また,直接には法規制の対象となるものではないが,日本固有の企業結合の形態に,旧財閥系の総合商社や銀行を中核として形成される,いわゆる企業集団(企業グループ)があり,その閉鎖性等に関し批判がなされる場合も少なくない。
→企業集中
執筆者:来生 新
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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