持分(読み)モチブン

デジタル大辞泉 「持分」の意味・読み・例文・類語

もち‐ぶん【持(ち)分】

全体の中で各人が所有または負担している部分割合
共有関係において、各共有者が共有物について持つ権利、またはその割合。
社団法人において、合名会社合資会社合同会社社員協同組合組合員特殊法人出資者などが持つ権利義務の総体としての地位、またはその割合を評価したときの評価額

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精選版 日本国語大辞典 「持分」の意味・読み・例文・類語

もち‐ぶん【持分】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 全体の中で、各人が所有、または、担当・負担している部分や割合。もちぶ。もちまえ。
    1. [初出の実例]「義縦がもち分の処にかけ銭を出さぬ者あるを天子へ申して其民の家を闕処するぞ」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)九)
  3. 江戸時代、農民が所持する一区画の土地。
    1. [初出の実例]「百姓小前面々持分の高は積らずして、一村一つかみだかと唱る、如此の村は総て定免にて、小前の石だかはなく、取米だかを面々持だかとして」(出典:地方凡例録(1794)一)
  4. ある財産について共有関係がある場合に、各共有者が共有物について一定の割合で持っている部分的な所有権持分権。また、その所有権の割合。
    1. [初出の実例]「各共有者は共有物の全部に付き其持分に応したる使用を為すことを得」(出典:民法(明治二九年)(1896)二四九条)
  5. 合名会社、合資会社、有限会社の社員が会社の財産に対して持っている権利の割合。また、その地位。
    1. [初出の実例]「社員は他の社員の承諾あるに非ざれば其の持分の全部又は一部を他人に譲渡すことを得ず」(出典:商法(1899)七三条)

もち‐ぶ【持分】

  1. 〘 名詞 〙もちぶん(持分)

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改訂新版 世界大百科事典 「持分」の意味・わかりやすい解説

持分 (もちぶん)

広くは,複数の人が直接・間接に財産関係に関与している場合,その各人が有する割合的権利または地位をいう。従来,一般に次の二つに大別するが,(2)の意味での持分は必ずしも社団法人,つまり法人格がある団体(各種の会社,協同組合など)の構成員にのみ特有なものではなく,法人格がない団体(権利能力なき社団など)の構成員にもほぼ同様に認められるものである。

(1)共有関係における持分 共有において共有者各自が共有物に対して有する権利。1個の所有権の数量的一部分。持分権ともいう。量的には部分的所有権であるが,質的には1個の所有権と同じである。したがって,その効力・保護に関しては,普通の所有権と同じ取扱いをうける。また,このような権利の割合,つまり,1個の所有権の数量的割合のことも持分といい,持分の割合ともいう。これは,法律や共有者間の契約などできまるが,これらによってきまらない場合は,相等しいものと推定される(民法250条)。共有者各自の共有物についての使用収益や管理費用などの負担をきめる標準とされる(249,253条)。
執筆者:(2)社団法人における持分 社団法人にあっては,構成員たる社員の持分は,社員が社員としての資格において法人に対して有する法律上の地位を意味し,社員の各種の権利義務の基礎となるものである。また,社員の持分は,経済的には社員が法人の財産について有する分け前を示す計算上の数額を意味する(商法89条など参照)。協同組合の組合員や合名・合資会社社員の持分は,出資の多少を問わずそれぞれ1個である(単一持分主義)。有限会社社員の持分は,細分化された割合的単位の形をとり,社員は出資1口ごとに1個の持分を有する(複数持分主義)。なお,社団法人のうち株式会社における持分は株式と呼ばれる。
株式 →共有 →組合
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「持分」の意味・わかりやすい解説

持分
もちぶん

共有関係における共有者の持分と、社団法人の構成員の持分とがある。

共有関係の持分

共有物について各共有者が一定の割合で有する権利(持分権)、もしくはその割合自体をいう。その割合は契約または法律の規定によって決定されるが、不明確な場合には各持分は相等しいものと推定される(民法250条)。共有者は持分の割合に応じて使用収益できるし(同法249条)、持分権を他人に譲渡することもできる。

[高橋康之]

社団法人関係の持分

合名会社・合資会社・合同会社の社員、協同組合の組合員、特殊法人の出資者などの持分で、これには、社員または組合員たる地位すなわち社員権をさす場合(持分の譲渡―会社法585条)と、社員または組合員が法人の財産について有する分け前を示す計算上の数額をいう場合(持分の払戻し―同法626条)とがある。株式会社の株式に対応する概念である。

[戸田修三・福原紀彦]

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百科事典マイペディア 「持分」の意味・わかりやすい解説

持分【もちぶん】

(1)共有関係における持分は,第1に,同一の物の上に成立する他の所有権に制限された所有権,すなわち持分権を意味し,第2に,各共有者の持分権の共有物全体に対する割合を意味する。各共有者はその持分に応じて共有物全部の使用収益をすることができる。(2)社団である法人の構成員の持分。合名会社・合資会社・合同会社の社員,協同組合の組合員などが,その資格において会社または組合に対してもつ権利義務の総体,あるいは法人の財産額に対し各社員などがもつ割前をいう。なお,2005年の会社法で有限会社は廃止され,同法は新たに合同会社を設け,合名会社,合資会社,合同会社の3種を〈持分会社〉と総称する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「持分」の意味・わかりやすい解説

持分
もちぶん
Anteil

(1) 共有関係における共有者の持分 共有関係(共有,組合,船舶共有)において,共有物に対する各共有者の制限された所有権,すなわち部分的所有権を意味する。この意味では持分権と同義である。そのほかに各共有者の権利の共有物全体に対する割合(持分の割合)を意味する場合もある。持分の割合は法律の規定や共有者の意思表示で決定されるが,不明確な場合は,各共有者の持分は相等しいものと推定される(民法250)。
(2) 社団たる法人の構成員の持分 持分会社の社員,中小企業協同組合など協同組合の組合員がその資格において,会社,組合に対して有する権利義務の総体。すなわち社員権を意味する場合と,上記の法人が解散するか,その構成員が脱退または退社したときに具体的に,問題となる当該法人の財産について,構成員が有する権利義務の割合を示す計算上の数額を意味する場合とがある。

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世界大百科事典(旧版)内の持分の言及

【共有】より

…これは,その後,フランス民法,ドイツ民法などに継受されて,日本民法に及んでいる。したがって,日本民法でも,共有は暫定的・経過的なものとされ,各人は,目的物のうえに有する所有権の数量的一部としての持分権(単に持分ともいう)を自由に処分でき,また,いつでも共有を解消できるとされる。 共有については民法249条以下に種々の規定が置かれている。…

※「持分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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