株主総会において株主の利益に重大な関係のある特定の決議が多数決によって成立した場合に,これに反対の株主が自己の有する株式を,その決議がなかったとすれば有したであろう公正な価格で買い取ることを会社に請求できる権利。多数決による決議の成立を認めつつ,決議に反対する少数株主に投下資本の回収という経済的救済を与えるため,アメリカ法にならい,1950年の商法改正で,とくに認められた権利である。有限会社の社員に認められている持分買取請求権も同種のものである(有限会社法41,63条)。株主に買取請求権を認めることについては,投下資本の回収は株式の譲渡によればよい,株金の払戻しを認めることになる,悪質株主(総会屋)に不当に行使されるおそれがある,などの理由から,これを疑問視する見解もあるが,株式を市場で換価処分できない閉鎖的な会社が多数存在している日本の現実からみて,その意義は無視できないものとなっている。
買取請求権が認められるのは,営業の全部または重要な一部の譲渡等の決議がなされた場合(商法245条ノ2),合併の決議がなされた場合(408条ノ3),1966年の改正で追加された,株式譲渡制限を定める定款変更決議がなされた場合(349条),1990年の改正で追加された,有限会社への組織変更の決議がなされた場合(有限会社法64条ノ2),の四つである(なお1981年の改正により暫定的に単位株制度を採用している会社において,単位未満株主に単位未満株式の買取請求権が認められているが,これは総会の決議と関係のない特殊な買取請求権である。〈株式〉の項参照)。買取請求権を行使するには,株主は,総会前に書面で会社に反対の意思を通知し,かつ総会で決議に反対したうえで,決議後20日以内に法定事項を記載した書面を会社に提出することを要する(245条ノ2,245条ノ3-1項)。これにより会社の承諾を要しないで当然に買取りの効果を生ずる。買取価格(公正な価格)は,決議の日における市場価格ではない。したがって,その決定はきわめて困難であるが,まず当事者の協議によって定め,もし協議がととのわない場合は,裁判所にその決定を請求することができる(245条ノ3-2項,3項)。
執筆者:青竹 正一
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