日本大百科全書(ニッポニカ) 「経済闘争・政治闘争」の意味・わかりやすい解説
経済闘争・政治闘争
けいざいとうそうせいじとうそう
労働者が賃上げ、首切り反対、労働時間短縮など労働条件の改善、および物価値上げ反対、増税反対など、広く生活条件の改善や経済的利益の確保を要求する闘争を経済闘争という。それ以外の、資本家や使用者との闘争では根本的に解決できない問題や要求、すなわち、最低賃金制・社会保障・職業訓練などの労働立法闘争、軍備縮小・核兵器使用反対・戦争政策反対などの平和闘争、政治的権利拡大、官憲の弾圧反対、選挙闘争、さらには政府の諸政策反対、革新連合政権樹立など、政治的諸要求を実現するための闘争を政治闘争という。
労働組合は、労働者が自ら労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織された団体である。したがって経済闘争は労働組合にとって最重要な基本的任務であり、それゆえ労働者は個々の資本家や使用者団体の搾取と合理化攻勢に対抗して、自らの労働条件・生活条件の維持改善のため絶えず闘争する。しかし、いかなる経済闘争でもそれだけでは抜本的、恒久的な改善を労働者にもたらすことができない。国家独占資本主義が一段と強化されている今日、労働者の労働条件・生活条件の維持改善を確実にするためには、政治権力に対する闘いの勝利を前提としなければならず、また闘いの成果を労働者全体のものとして制度的に確立するためにも、経済闘争は目的意識的に政治闘争と結び付かざるをえない。この意味では、労働者の経済闘争は政治闘争の発展の土台となっているだけでなく、政治闘争との緊密な結合のもとでのみ、より大きな成果と恒久的な改善をもたらすものとなる。したがって、経済闘争と政治闘争は、いわば労働者階級における階級闘争の不可分な構成要素となっているだけでなく、労働組合運動における原則的な路線ともなっている。
[吉田健二]