消費増税転嫁法(読み)しょうひぞうぜいてんかほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「消費増税転嫁法」の意味・わかりやすい解説

消費増税転嫁法
しょうひぞうぜいてんかほう

消費増税時に商品への円滑な税率転嫁を促すために存在した特別措置法。2013年(平成25)10月に施行され、2021年(令和3)3月末まで効力があった。正式名称は「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(平成25年法律第41号)で、消費税転嫁対策特別措置法ともいう。消費税率を5%から8%、10%へと段階的に引き上げるのに伴い、(1)大規模商業施設などの大企業が中小事業者に増税分を転嫁しないよう求める「買いたたき」の禁止、(2)公正取引委員会に通報した事業者との契約を打ち切る「報復行為」の禁止、(3)税込み価格の表示を義務づけた「総額表示方式」の例外容認、などを柱とした。不正が疑われた場合、転嫁対策調査官(転嫁Gメン)が指導・助言を行い、悪質な場合は勧告・社名公表を行った。1997年(平成9)の消費増税時(税率3%→5%)に、価格転嫁が困難で増税分をかぶる中小企業者が相次いだ反省を踏まえた措置であった。

 買いたたきや報復行為以外に、役務利用・利益提供の要請や本体価格での交渉の拒否などを禁止行為とした。増税後の宣伝手法として「消費税還元」など、あたかも増税分を価格に上乗せしていないかのように誤解させる宣伝を禁じた。価格表示について消費税法第63条は「総額表示」を義務づけているが、段階的な増税で値札の貼(は)りかえなどが中小事業者の負担となるため、特例として、税を含まないことを明示していれば「税抜き価格」の表示も時限的に認めた。また独占禁止法規制を緩め、中小企業団体が増税分を一斉に価格に上乗せする「転嫁カルテル」や、価格の表示を一律に決定する「表示カルテル」を認めた。当初2017年3月末までの時限立法であったが、増税時期そのものが延期されたため、2021年3月まで延長された。

[矢野 武 2021年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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