精選版 日本国語大辞典 「罷出ず」の意味・読み・例文・類語
まか・ずまかづ【罷出】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ダ下二段活用 〙 「まかりいず(罷出)」が変化して、中古から用いられた語。
- [ 2 ] 〘 他動詞 ダ下二段活用 〙 物などを、貴所から下げる。
- [初出の実例]「つとめて、この箱をまかてさせ給へるにぞ、親しき限りの人々、思ひ合はする事どもありける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
罷出ずの語誌
( 1 )「まかづ」は、中古では「まかる(罷)」が主として対話敬語であるのに対し、「出る」場所(そこの主)を敬う、客体尊敬の語である。[ 一 ]②のような対話敬語(聞き手に対しへりくだるもの)もあるが、一部の男性また僧侶などの用いる特殊な用法のものだったとする考えもある。
( 2 )「まかづ」は「まかりいづ」の変化したものであるが、「り」の撥音が表記されたものとも見られる「まかんづ」の形もある。「源氏‐手習」の「御忌む事は、いとやすく授け奉るべきを、急なる事にまかんてたれば、今宵かの宮に参るべく侍り」など。