罷出ず(読み)まかず

精選版 日本国語大辞典 「罷出ず」の意味・読み・例文・類語

まか・ずまかづ【罷出】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ダ下二段活用 〙 「まかりいず(罷出)」が変化して、中古から用いられた語。
    1. ( 「まかりいず(罷出)」に当たるもの ) 「出る」場所を敬う謙譲語。貴人のそばから離れ去るのをいう。⇔参る〔五段活用〕
      1. (イ) (貴所・貴人のそばから)退出する。退下する。
        1. [初出の実例]「参入り罷出(マカツル)人の選び知らし、神等のいすろこひあれび坐すを」(出典延喜式(927)祝詞(享保版訓))
      2. (ロ) (貴人に仕えていた者が)奉公をやめて出る。お暇をいただいて退下する。
        1. [初出の実例]「この女のいとこの御息所、女をばまかでさせて、蔵にこめてしをり給うければ」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
    2. ( 「まかりいず(罷出)」に当たるもの ) 自己または自己側の者の「出る」動作を、聞き手に対しへりくだり丁重にいう対話敬語。出ます。出てまいります。
      1. [初出の実例]「まうでがたくのみおもひてはべるたよりになん。まかでんことは、いつとも思う給へわかれねば、きこえさせんかたなく」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ダ下二段活用 〙 物などを、貴所から下げる。
    1. [初出の実例]「つとめて、この箱をまかてさせ給へるにぞ、親しき限りの人々、思ひ合はする事どもありける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)

罷出ずの語誌

( 1 )「まかづ」は、中古では「まかる(罷)」が主として対話敬語であるのに対し、「出る」場所(そこの主)を敬う、客体尊敬の語である。[ 一 ]のような対話敬語(聞き手に対しへりくだるもの)もあるが、一部の男性また僧侶などの用いる特殊な用法のものだったとする考えもある。
( 2 )「まかづ」は「まかりいづ」の変化したものであるが、「り」の撥音が表記されたものとも見られる「まかんづ」の形もある。「源氏手習」の「御忌む事は、いとやすく授け奉るべきを、急なる事にまかんてたれば、今宵かの宮に参るべく侍り」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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