御息所(読み)ミヤスドコロ

デジタル大辞泉 「御息所」の意味・読み・例文・類語

みやす‐どころ【息所】

《「みやすみどころ」の音変化。天皇の御休息所の意から》
天皇の寝所に侍する宮女女御にょうご更衣こういその他、広く天皇に寵せられた宮女の称。また一説に、皇子皇女の母となった女御更衣の称という。みやすんどころ。「六条の御息所
「上は、―の見ましかば、とおぼし出づるに」〈桐壺
皇太子妃または親王妃の称。
二条の后、春宮とうぐうの―と申しける時に」〈古今物名詞書

みやすん‐どころ【息所】

みやすどころ」に同じ。
「在中将、内にさぶらふに、―の御方より」〈大和・一六二〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御息所」の意味・読み・例文・類語

みやす‐どころ【御息所】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「みやすみどころ」の変化した「みやすんどころ」の撥音「ん」の無表記。天皇の御休息所の意から )
  2. 天皇に侍する宮女の敬称。皇子・皇女を産んだ女御・更衣をいう場合が多いが、皇子・皇女のない場合にも、また、広く天皇に寵せられた宮女にもいう。
    1. [初出の実例]「みやすところあまたなりたまひにける中に」(出典:延喜御集(967‐1000頃))
  3. 皇太子および親王の妃の敬称。
    1. [初出の実例]「先坊にみやす所まゐりたまふ事、本院のおとどの御女ぐして三四人なり」(出典:大鏡(12C前)二)

みやすん‐どころ【御息所】

  1. 〘 名詞 〙
  2. みやすどころ(御息所)
    1. [初出の実例]「二条の后の、とう宮のみやすん所ときこえける時」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・八・詞書)
  3. みやすどころ(御息所)
    1. [初出の実例]「さい宮も、かはり給にしかばみやすむ所のぼり給て後、かはらぬさまに何事もとぶらひきこえ給事は」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「御息所」の意味・わかりやすい解説

御息所 (みやすどころ)

奈良平安時代における天皇のキサキ通称。〈みやすみどころ〉の変形で〈みやすんどころ〉ともいう。平安時代に入るともっぱら女御更衣別称として使用された。本来は天皇の御休息所の意味であったと思われるが,転化して,別殿を賜り,そこに起居する人を指すようになったと考えられる。また,東宮上皇の嫡妻以外のキサキの称として用いられることもあった。《源氏物語》をはじめ,平安時代の文学作品に多くの例をみる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「御息所」の意味・わかりやすい解説

御息所
みやすどころ

天皇の寝所に侍する宮女の称。天皇の休息する殿中に伺候する意による呼称。女御(にょうご)や更衣(こうい)を御息所と称した例もあるが、両者が弘仁(こうにん)式や延喜(えんぎ)式などにも規定の存する後宮の成員の公称であるのに対し、御息所は女御以下の宮女をさす汎称(はんしょう)である。平安前期の文献にみえ始め、物語や歌書の類に多くみかけるが、平安後期以降は天皇の後宮をさす例が希有(けう)となり、もっぱら皇太子や親王の妃(ひ)の称となった。

[橋本義彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「御息所」の意味・わかりやすい解説

御息所【みやすどころ】

〈みやすみどころ〉(天皇の寝室)の転訛。転じて寝室に仕える女性をいい,平安中期には女御(にょうご)・更衣(こうい)・皇太子妃などの称。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御息所」の意味・わかりやすい解説

御息所
みやすどころ

「みやすんどころ」ともいう。天皇,皇太子,親王らの配偶者。もとは天皇の休息所,寝室の意。制度的な呼称ではなく,天皇の御寝に侍した官女とか,皇子,皇女を生んだ女御 (にょうご) ,更衣をさした。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「御息所」の解説

御息所
みやすどころ

「みやすみどころ・みやすんどころ」とも。もとは天皇の休息所,またその寝所に侍り,天皇の寵愛をうけた宮人をいう。皇子・皇女を生んだ女御(にょうご)・更衣(こうい)をいう場合が多い。のちには皇太子妃や親王妃を称するようになった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android