精選版 日本国語大辞典 「羽根」の意味・読み・例文・類語
は‐ね【羽根・羽・翅・羽子】
- 〘 名詞 〙
- ① 鳥の羽軸(うじく)の付根の部分。翮(かく)。羽柄。羽茎(はぐき)。〔十巻本和名抄(934頃)〕
- ② 鳥の羽毛のこと。
- ③ 鳥のつばさ。また、哺乳類蝙蝠(こうもり)の飛ぶための器官もいう。
- [初出の実例]「鴨すらも 妻とたぐひて わが尾には 霜な降りそと しろたへの 波禰(ハネ)さし交へて うち払ひ さ寝(ぬ)とふものを」(出典:万葉集(8C後)一五・三六二五)
- ④ 昆虫の中胸・後胸におのおの一対ある飛ぶための器官。一般に膜状器官で翅脈によって支持されている。胸部の腹面からその基部に付着した翼筋の伸縮により振動し浮力と推進力が与えられる。中胸に生ずるものを前翅、後胸に生ずるものを後翅といい、形態が著しく異なることもある。表面には鱗片・毛などの付属物をもつ。
- [初出の実例]「かいこのまだはねつかぬにし出だし」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)虫めづる姫君)
- ⑤ 矢に矧(は)ぐ鳥のつばさなどの羽。矢羽根。
- ⑥ 無患子(むくろじ)の核に穴をあけ、色をつけた鳥の羽毛数本をさしたもの。正月に、これを羽子板(はごいた)でついて遊ぶ。羽子(はご)。《 季語・新年 》 〔俳諧・誹諧初学抄(1641)〕
- ⑦ 機械・器具などに取りつける鳥のつばさの形の部品。
- ⑧ 紋所の名。②の形を種々に組み合わせて図案化したもの。三つ羽根、三つ割羽根、三つ寄せ羽根、三つ羽根丸、四つ羽根、四つ羽根丸、羽根桐などの種類がある。
- ⑨ 羽織(はおり)。また、着物。江戸時代、文政・天保(一八一八‐四四)頃、遊里などで流行した語。のちに、大工仲間や盗人仲間の隠語。〔当世花詞粋仙人(1832)〕
- ⑩ 二重回しなどの外套で、二重になったものの外側の部分。
- [初出の実例]「自分は外套の羽根(ハネ)を返して」(出典:文鳥(1908)〈夏目漱石〉)
- ⑪ 楊弓・大弓で、銭を賭ける時に、四銭をいう語。
- ⑫ 歌舞伎で、鬘(かつら)の襟足の毛先をいう。