改訂新版 世界大百科事典 「つばさ」の意味・わかりやすい解説
つばさ
Wings
サイレント映画最後の〈スペクタクル映画〉として知られる1927年製作のアメリカ映画。監督は第1次世界大戦でフランス空軍部隊に加わった経歴のあるウィリアム・A.ウェルマンで,〈航空映画〉の傑作として映画史に記される作品。キング・ビダー監督によるMGMの戦争映画の大作《ビッグ・パレード》(1925)に対抗してつくられたパラマウントの戦争映画で,第1次大戦を背景に男の友情と恋のドラマを描き,悲劇に終わる青春ロマンス的な物語であるが,見せ場は20台をこえるカメラを駆使して撮影したといわれる空中戦である。この映画が公開される2ヵ月あまりまえにチャールズ・リンドバーグが大西洋無着陸横断単独飛行に成功し,航空熱が高まっていたことも手伝って興行的にも大成功し,その後《暁の偵察隊》(1930),《最後の偵察》(1931),《火の翼》(1932)などの〈航空映画〉が流行するさきがけともなった。アメリカのロードショーでは,上映時間2時間16分の約半分が映写機に補助レンズをつけて映像を拡大する〈マグナスコープMagnascope〉と呼ばれる拡大スクリーンに,そして空中シーンの一部は青と赤の二色法カラーで上映された。第1回アカデミー作品賞と技術効果賞を受賞している。
執筆者:柏倉 昌美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報