隠語(読み)いんご(英語表記)argot; slang

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

隠語
いんご
argot; slang

利害を同じくする人々の間で局外者が話の内容を容易に理解することができないように用いる単語や慣用句。仲間意識を強める効果をもつ。普通,一般語を短縮したり,ひっくり返したりしてつくられる。警察>サツ,新聞屋>ブンヤ,池袋>ブクロ,恐喝>カツアゲ,紙入れ>ミイレ,感づく>ズク,場所>ショバ,上野>ノガミ,(浅草) 公園>エンコ,種>ネタなど。雲>モク (煙草〈たばこ〉) や,釈迦の遺骨が米粒に似ていることからきた「シャリ」など,形状の類似によるものもある。また商人同士が客に値段を知られないために使う隠語は符丁ともいわれる。

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百科事典マイペディアの解説

隠語【いんご】

特定の職業や階級に属する人びとが用いる,仲間だけに通じて他の人びとには理解されないような言葉。一般には香具師(やし)や博徒,また犯罪者集団等の符丁言葉を意味することが多いが,宮廷女官の女房言葉,僧侶の学林秘語,猟師の山言葉なども広い意味における隠語といえる。構成の方法には,音節の転倒(公園をエンコ),音節の省略(恐喝(きょうかつ)をカツ),比喩(ひゆ)(土蔵をムスメ――白く塗るから)などがある。
→関連項目スラング

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世界大百科事典 第2版の解説

いんご【隠語】

特定の階層や職業の社会集団だけにしか通用しない秘密性を帯びた特殊な言葉。元来は〈かくしことば〉といったが,隠語の字をあてられた結果〈いんご〉と呼ばれるようになり,スラングslangの訳語ともされて,隠語の意義内容は複雑になった。隠語は仲間うちだけに通用する目的の非公式の言葉であるから,香具師(やし)や犯罪者等の反社会的集団のものだけにかぎらず,平安時代の神宮の〈斎宮忌詞(いつきのみやいみことば)〉(塔をアララキ,僧をカミナガ,打つをナヅなど),宮廷女官の〈女房言葉〉(田楽をオデン,杓子をシャモジ,豆腐をオカベなど),僧侶の〈学林秘語〉(卵をシロナス,鮎をカミソリ,酒をゴマスなど),大阪の人形遣いの用いた〈占傍(せんぼう)〉(金銭をセンタロウなど),漁師の〈沖言葉〉や猟師の〈山言葉〉なども広い意味で隠語といえる。

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大辞林 第三版の解説

いんご【隠語】

特定の職業・社会の者の間だけで通用する特殊な語。仲間以外の者から秘密を守るためや、仲間同士であることを確認しあうために使われる。「警察」を「さつ」などという類。
なぞ。判じ物。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

隠語
いんご

特定の職業や身分に属する限られた人々の間で、主として秘密を守ったり、あからさまにいうのを避けたりするために用いる特別のことばのことをいう。たとえば、盗人同士の間で「買う」といえば盗むの意であり、「猿」といえば囚人のことである。方言、技術者や学者が使う専門語なども限られた人々の間で用いられるものであるが、前者は地域的に限られたもの、後者は正確で敏速な伝達のためのものであって、いずれも公開をはばかるためのものではないから、隠語とはよばれない。隠語にはまた、他人にわからないことばを使うことで仲間意識を強める、特別なことばを考え出して使うことで単調さを破る、といった効用もある。「ゲルピン」(金に困っている状態)、「バックシャン」(後ろ姿美人)のような語では、その性格が強い。「ネタ」(材料)、「ロハ」(只(ただ))のように一般に広く知られたものになると、日常語との区別がつきにくくなる。
 隠語は、盗人、博徒、やくざなど反社会的な集団で用いられるものが多いが、職人(「おしゃか」=不良品)、商人(「あげもの」=盗品)、僧侶(そうりょ)(「はだし」=鶏肉)、兵隊(「あひる」=水陸両用トラック)、学生(「ムスケル」=肉体労働)などの間でもそれぞれに用いられるものがある。また、同じ盗人でも、すりと窃盗では用語が分化していたり、あるいは盗人の隠語が警察関係者の間で流用されたりといった現象もみられる。
 隠語では、語義の転変や語の入れ替わりが通常のことばよりもはるかに激しい。たとえば「げそ」は履き物、下駄(げた)の意から、草鞋(わらじ)、あし、逃亡、などへと変わっているし、一方「盗む」の意を表すのに、買う、嫁ぐ、きぶる、ぎる、かまる、たける、摘む、ばいする、もらう、儲(もう)ける、やかす、など種々の語がつくられている。これは、語感の新鮮なものを求めること、秘密を守るのにもしばしば変わるほうが都合がよいことなどによる。使う人の範囲が狭いので、頻繁に変わっても支障が生じにくいのである。
 隠語のでき方には、(1)ことばの形を変えるもの、(2)あることばを普通の意味とは違う意味に使うもの、などがある。(1)には、省略によるもの(「がね」=眼鏡、「あい」=匕首(あいくち))、転倒によるもの(「えこ」=声、「ばいし」=芝居、「ぶけい」=警部、「くつる」=つくる、「るまい」=丸い)があり、転倒によるものが犯罪者の隠語の主流をなしている。(2)には、その語形の日常的な語義と隠語として意味する内容とのなんらかの類似性に基づくもの(「松葉」=針、「黒烏(くろがらす)」=冬服刑事、「牛の舌」=こんにゃく)、近接性に基づくもの(「極楽」=蓮根(れんこん)、「檜(ひのき)板」=上等酒、「がちゃ」=巡査)がある。また(1)と(2)の組み合わさったものもあり(「アカ」←「赤犬」=火事)、ほかに謎(なぞ)に類するもの(「くのいち」=女)もある。なお、品詞の面では、名詞が圧倒的に多い。[尾上圭介]

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世界大百科事典内の隠語の言及

【スラング】より

…集団内の心理的同一化を図るのに力がある。隠語もその点で同じ働きをするが,これは集団内の秘密通信が目的である。しかし,隠語として生まれたものが,のちにスラングとして用いられることもある(たとえば演劇関係者が使う〈ジャリ〉――子どもの意)。…

※「隠語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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