改訂新版 世界大百科事典 「耐熱性繊維」の意味・わかりやすい解説
耐熱性繊維 (たいねつせいせんい)
heat resistant fiber
耐熱性繊維は,火や高温に接した場合に燃焼しにくい繊維のことで,厳密に難燃繊維と区別することは難しいが,燃焼性からみた場合,最も難燃性の高い繊維である。高温物体と接触したときに燃焼や溶融して穴あきを起こさないことが目標性能であり,溶融金属を扱ったりする際などの防護服が,そのおもな用途である。芳香族ポリアミド(アラミド),ポリイミド,ポリベンズイミダゾール,ノボロイド,難燃加工綿などのポリマーから作られる繊維は耐熱性繊維である。メタフェニレンジアミンと塩化イソフタロイルの重縮合反応で合成される芳香族ポリアミドから乾式紡糸で作られる繊維は,HT-1繊維またはノメックスと呼ばれ,耐熱性に優れている。
また,アクリル繊維を250~275℃の炉内で加熱して得られる,ナフチリジン構造をもつ一種の炭素繊維があり,これは火炎の中に入れても燃えない。この炭素繊維は摩耗強度は低いが,耐炎性衣料を織るのに適する。
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報