アクリル繊維(読み)あくりるせんい(英語表記)acrylic fiber

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリル繊維」の意味・わかりやすい解説

アクリル繊維
あくりるせんい
acrylic fiber

アクリロニトリルCH2=CHCNをおもな構成成分とした合成繊維の一種。単量体の重合によってつくられているが、その単量体成分のアクリロニトリルの含有量が重量で40%以上50%以下のものをアクリル系繊維とよび、アクリロニトリルのそれ以上の含有量のアクリル繊維と区別している。前者カネカロン後者カシミロンボンネルエクスランなどの商品名で市販されている。アクリロニトリルだけでは繊維になりにくいので塩化ビニルクロロエチレン)や酢酸ビニルと共重合されている。アクリロニトリルだけの繊維は炭素繊維をつくる原料としてのみ使用され、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどと共重合したものであり、共重合の結果、染色性、溶解性などが改良される。アクリル繊維は、ポリプロピレンを別にしてナイロンとともにもっとも軽い合成繊維で、羊毛に似て、柔らかく、かさ高い温かみのある触感を示し、さらに引張り特性が羊毛よりよく、おもに短繊維の形で生産されている。合成繊維は一般に他の繊維と混紡されるが、とくにアクリル繊維は羊毛、レーヨン木綿と混紡されている。

垣内 弘]

『片山将道著『アクリル系合成繊維』(1959・日刊工業新聞社)』『桜田一郎ほか編『合成繊維』(1964・朝倉書店)』『祖父江寛著『産業化学シリーズ 合成繊維』改訂(1975・大日本図書)』『宮坂啓象・岡本三宜著、日本化学会編『新産業化学シリーズ 新合成繊維』(1996・大日本図書)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アクリル繊維」の意味・わかりやすい解説

アクリル繊維
アクリルせんい
acrylic fibre

アクリロニトリルを主原料とした単重合体または共重合体の合成繊維の総称。共重合する酢酸ビニル・塩化ビニルなどの比率によって繊維の性質が異なる。狭義では,アクリロニトリルの比率が比較的高いものをモダクリル繊維と呼んで区別する。また表示法上は,アクリロニトリルの共重合比率が 50%以上のものをアクリル繊維,50%以下のものをアクリル系繊維と区別する。製造法はアクリロニトリルを溶剤に溶解させ,湿式または乾式紡糸法による。アメリカのデュポン社が 1949年に開発したオーロンが最初であるが,日本でも 50年代後半からエクスラン,カシミロン,ボンネル,ベスロンなどが工業化された。一般に比重が軽く,染色性,保湿性などにすぐれ,羊毛をはじめ綿,レーヨンなどとの混紡が容易である。セーター類,肌着などのほか毛布,カーペットなどに使われている。

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