日本大百科全書(ニッポニカ) 「耳鳥斎」の意味・わかりやすい解説
耳鳥斎
にちょうさい
生没年不詳。江戸中期の画家。俗称松屋平三郎。大坂の人。初め造酒業を営み、のち骨董(こっとう)商となった。絵を好み、『鳥獣人物戯画』の作者と仮託された平安時代の鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)や、江戸前期の画僧古礀明誉(こかんめいよ)(1653―1717)などの略画体を独学し、簡略な筆致による軽妙洒脱(しゃだつ)な戯画風に一家をなした。天明(てんめい)年間(1781~89)には耳鳥斎の扇面画が大坂で非常な流行をみたといい、肉筆画にも優れたが、役者似顔絵本『絵本水や空』(1780)などの版本の絵本で大衆の人気を博した。1793年(寛政5)に没したとする説もあるが、諸資料から享和(きょうわ)年間(1801~04)までの在世が推定されている。
[小林 忠]