普及版 字通 「肆(漢字)」の読み・字形・画数・意味
肆
13画
(異体字)
15画
[字訓] つらねる・みせ・ほしいまま
[説文解字]
[金文]
[字形] 会意
正字はに作り、(ほう)+隶(たい)。は髟、長髪のものをいう。はその獣尾をもつ形。獣尾をとらえることを(逮)という。隶は手が尾に及ぶ意。字の構造は隷と似ており、隷は呪霊のある獣を用いて、禍殃を他のものに転移する呪儀。これによって禍殃を他に移すことを「隷(つ)く」といい、転移されたものを隷といい、隷属・奴隷の意となる。肆はおそらくこれによって人に死をもたらすもので、〔説文〕九下に「極陳なり」と訓し、隶声とする。極は、極陳とは殺して肆陳することをいう。〔周礼、秋官、掌戮〕に「そ人をすは、(こ)れを市に(たふ)し、之れを肆(さら)すこと三日」とあり、それが字の原義。それより肆陳・放肆の意となり、肆赦の意となる。〔左伝、昭十二年〕「昔、穆王其の心を肆(ほしいまま)にせんと欲す」とは放肆、〔書、舜典〕「災(せいさい)は肆赦す」は赦免の意である。金文にこの字を〔毛公鼎〕「肆(ゆゑ)に皇天(いと)ふこと(な)し」のように接続の語に用い、〔詩、大雅、抑〕「肆に皇天(つね)とせず」というのと語法同じ。人を肆殺することが字の原義。他は引伸・仮借の義である。
[訓義]
1. ころす、ころしてさらす。
2. つらねる、ならべる。
3. ほしいまま、ほしいままにする、きわめる、わがまま。
4. ゆるやか、大きい、ながい。
5. ゆえに、まことに、ここに。
6. みせ。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕肆 伊知久良(いちくら) 〔名義抄〕肆 イチクラ・ホシイママ・シク・ツキヌ・ツヒニ・カルガユヱニ・シカルガユヱニ・カルガユヱニイマ・ノブ・ナラス・トク・トシ・オカシ・ツク・ツトム・ヤマシ・スツ・ナラナフ・ナラフ・ツラヌ・タヘタリ・スス・イマ・ホドコス・イマシム・アキラカニ・ヒコバユ・ユルス・ナラフ・カタシ・モチヰル
[語系]
肆siet、死sieiは声義近く、尸(し)・屍sjieiもまた同系の語である。肆陳の陳dienもその系列に入りうるものであろう。また恣tzieiと声が通じ、肆の引伸義として恣縦の意がある。矢陳(つらねる)の意は、矢sjieiと通ずるものであろう。
[熟語]
肆意▶・肆飲▶・肆▶・肆夏▶・肆既▶・肆器▶・肆議▶・肆虐▶・肆逆▶・肆凶▶・肆極▶・肆勤▶・肆刑▶・肆献▶・肆口▶・肆好▶・肆行▶・肆志▶・肆侈▶・肆尸▶・肆祀▶・肆赦▶・肆奢▶・肆手▶・肆章▶・肆縦▶・肆情▶・肆心▶・肆人▶・肆▶・肆然▶・肆咤▶・肆惰▶・肆体▶・肆大▶・肆宅▶・肆断▶・肆直▶・肆廛▶・肆店▶・肆▶・肆毒▶・肆任▶・肆筆▶・肆吻▶・肆忿▶・肆放▶・肆暴▶・肆目▶・肆野▶・肆宥▶・肆欲▶・肆覧▶・肆詈▶・肆掠▶・肆流▶・肆力▶・肆戻▶・肆列▶
[下接語]
安肆・横肆・開肆・楽肆・玩肆・旧肆・居肆・魚肆・矜肆・強肆・驕肆・軽肆・古肆・肆・広肆・荒肆・講肆・市肆・志肆・咨肆・自肆・奢肆・酒肆・書肆・舒肆・縦肆・城肆・井肆・正肆・惰肆・泰肆・茶肆・朝肆・陳肆・店肆・騁肆・放肆・卜肆・夜肆・羊肆・欲肆・陵肆・隣肆・列肆
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報