肛門部ボーエン病

六訂版 家庭医学大全科 「肛門部ボーエン病」の解説

肛門部ボーエン病
(直腸・肛門の病気)

 肛門周囲の皮膚ボーエン病は、ゆっくりと進行する真皮内の扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん(上皮内がん)です。外観は肛門周囲の皮膚の慢性湿疹のようにみえます。年齢的には60代に最も多く発症します。

 ボーエン病は、子宮頸がんと同じようにヒトパピローマウィルスが原因であることが最近になってわかってきました。このウイルスは100種類以上のタイプがあり、ある種のタイプ(6型、11型)は尖圭(せんけい)コンジローマという肛門や性器に小さないぼの集まりができる病気の原因となるウイルスですが、別のタイプ(16型、18型など)は子宮頸がんの原因となります。現在ではボーエン病は、この子宮頸がんの原因となるウイルスと同じタイプが肛門の上皮に感染して発症する肛門扁平上皮がんの前がん状態(上皮内がん、異型上皮)と同じ疾患であると考えられています。

 症状としては、かゆみ、焼灼感(しょうしゃくかん)、斑点様の出血などがみられます。肉眼では不連続な紅斑、または褐色で表面が湿潤した瘢痕様(はんこんよう)の外観を示します。

 確定診断には、病変部の広範囲な生検が行われます。上皮内の扁平上皮がんで特徴的なボーエン様細胞がみられると、ボーエン病と診断されます。

 治療は外科的切除原則です。肉眼で見えている以上に広がっていることがあるため、広範囲な局所切除術が行われます。皮膚や肛門上皮の欠損が大きい場合は、皮膚移植も行われます。局所再発した場合でも、再度局所切除することで治癒します。予後は比較的良好です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報