改訂新版 世界大百科事典 「皮膚移植」の意味・わかりやすい解説
皮膚移植 (ひふいしょく)
skin graft
やけどや外傷などによる瘢痕(はんこん)やあざなどの治療のため,その部分に健康な皮膚を移植すること。この移植のための手術を植皮術dermatoplastyという。植皮術には,血行を保ったまま,皮下組織ごと移植する有茎植皮術と,表皮あるいは真皮までの皮膚を切り取って移植する遊離植皮術とがある。前者は移植を必要とする部分に,隣接する皮膚を筋肉を含めて移動させたり,マイクロサージャリーの技術を用いて,遠隔皮膚を切り取り,動静脈を吻合(ふんごう)する方法がとられる。後者は皮膚欠損部に離れたところから切除した皮膚を移動逢合する方法で,移動する皮膚は患部の色調,性状と合ったものが選ばれる。大腿部や腹部の皮膚が選ばれることが多い。有茎植皮術は移植を必要とする皮膚の大きさや移動する方向によって制限があるが,生着率は遊離植皮術よりはるかに高い。皮膚移植後は感染を起こさないようにするとともに,皮膚が動かないように注意する必要がある。なお遊離植皮術には,同じ人の他の部分の皮膚を移す自家移植と,他人の皮膚を用いる同種移植とがあるが,実際には自家移植以外はほとんど行われない。最近では,自らの皮膚を培養してシートにしたものも使用されている。
執筆者:菊池 祥之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報