内科学 第10版 「肺形成不全」の解説
肺形成不全(発育異常・形成不全)
概念
肺の形成不全は無発生と無形成と低形成に分類される.気管・気管支・肺・血管をまったく認めないものを無発生(agenesis)とし,瘢痕程度の気管は認めるが肺・血管を欠如した無形成(aplasia)に分けるが,両者は明確には区別できない場合もある.低形成(hypoplasia)は肺としての形態は備えているものの,気道・血管・肺胞の数やサイズが不十分なものを指す.
病因
肺の形成不全は遺伝的要因によるもの以外に,胎生期の他臓器障害,たとえば横隔膜ヘルニアでの腹腔内容物による胸腔内の占拠や胸郭,横隔膜,胸壁の筋骨格や神経障害で胎生期の呼吸運動が低下することで充分肺胞が形成されないことなどの二次的な要因でも生じることがある.
画像所見
無発生・無形性・重症低形成の場合の放射線学的所見は共通し,1側胸郭の完全な含気肺の消失で鑑別には無気肺・虚脱を伴う重症気管支拡張症などがあがり,CTもしくはMRIで肺の形成の有無,未発達な気管支・肺動脈の有無により鑑別される.
臨床症状
両側の肺が形成されない場合,母胎からの酸素供給が途絶えた後,生存は不可能である.このような無肺症では,出産後,外見上は正常で胸郭の大きさも普通であるが,心血管系の奇形,骨発育異常,臍帯動脈の欠如,無脾をしばしば合併する.片側の無肺症では,生存しうる例があるが多くは感染症で成人になる前に死亡する.[久良木隆繁・礒部 威]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報