日本大百科全書(ニッポニカ) 「横隔膜ヘルニア」の意味・わかりやすい解説
横隔膜ヘルニア
おうかくまくへるにあ
diaphragmatic hernia
横隔膜に欠損孔があって腹腔(ふくくう)内の胃、小腸、結腸、肝臓(左葉)、脾臓(ひぞう)、膵臓(すいぞう)などの臓器が胸腔内に脱出した状態をいう。そのほとんどは左側に発生する。右側に少ないのは肝臓が欠損孔を閉塞(へいそく)するためと考えられている。多くは先天性で新生児期から症状を現すが、まれに外傷性横隔膜欠損による後天性ヘルニアもみられる。症状は、胸腔に脱出した腹腔臓器が肺を圧迫するため呼吸困難(チアノーゼ、呼吸促進、陥没呼吸、努力呼吸など)をきたす。先天性では、圧迫による肺の発育不全が高度なものほど、生後早期から症状が著明であり、予後も不良である。治療は、術前に適切な呼吸管理を行い、開腹して横隔膜欠損を修復する。
[戸谷拓二]