肺炎球菌ともいう。グラム陽性,ランセット形の球菌(大きさは0.5~1.0μm)で,ふつう底面で2個ずつ相接して双球菌の形をとる。培養すると,これらの双球菌が短い連鎖をつくる。菌体の表面は,多糖体の莢膜に包まれている。肺炎双球菌は,ヒトに対して病原性をもち,大葉性肺炎の原因菌となるが,健康者においても,鼻咽頭腔の粘膜表面に見いだされる。肺炎双球菌の感染鎖はヒトからヒトに結びついており(飛沫感染),閉鎖集団に感染が多発しやすい。肺炎双球菌は,1881年にL.パスツールによってヒトの唾液から発見され,ヒトの肺炎との関係は,86年にフレンケルAlbert Fränkelの広範な研究によって確定された。また1928年にはF.グリフィスによって,形質転換が最初にこの菌で発見され,O.T.エーブリーによって,この形質転換がDNAによることが44年に見いだされ,遺伝学の発展の契機となった菌としても有名。
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…コロンビア大学医学部卒業後ホーグランド研究所を経て,1913‐48年ロックフェラー医学研究所に勤める。主として肺炎双球菌の研究を行い,細菌の病原性と莢膜(きようまく)の存在が密接に関連していること,肺炎双球菌の免疫学的特異性を示す物質が,細菌の莢膜を形成している多糖類であることを示した。またF.グリフィスの発見による肺炎双球菌のS型からR型への形質転換現象に注目し,1932年ころよりこの形質転換物質の分離を試み,44年この物質がDNA(デオキシリボ核酸)であることを示した。…
※「肺炎双球菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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