内科学 第10版 「胸腺低形成」の解説
胸腺低形成(原発性免疫不全症候群)
概念・病因
胸腺の低形成による細胞性免疫不全症,副甲状腺の低形成による低カルシウム血症,心大血管の異常を呈する.約90%の症例で染色体22q11のハプロイドゲノムの欠損を有する.典型例はDiGeorge症候群とよばれる.
臨床症状
ウイルス,真菌,結核菌などによる感染症に罹患する.さらにヘルパーT細胞機能の障害のため特異抗体の産生障害,それによる細菌感染症を呈する.低カルシウム血症とテタニー,顔面の形態異常(小顎症,耳介低位),大血管異常を認める.
検査成績
胸部CTで胸腺の欠損がみられる.T細胞数はやや低下,B細胞数は相対的に増加する.
診断
大血管奇形,テタニー,顔貌異常で気づかれることが多い.染色体検査で22q11または10p13の欠失を認める.
治療
低カルシウム血症,大血管奇形の治療が救命のため必要で,重症の細胞性免疫不全がある場合には胸腺移植が試みられることがある.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報