副甲状腺(読み)フクコウジョウセン(その他表記)parathyroid

翻訳|parathyroid

改訂新版 世界大百科事典 「副甲状腺」の意味・わかりやすい解説

副甲状腺 (ふくこうじょうせん)
parathyroid

上皮小体ともいう。甲状腺の左右両葉の背面上下2対の計4個(ときに5個以上)存在する米粒大の内分泌器官である。小さな器官ではあるが,副甲状腺ホルモンを分泌し,体内のカルシウムCaやリンPの代謝の調節にあずかるたいせつな器官である。発生学的には内胚葉性で,四つのうち上の二つは第4鰓囊(さいのう)の上皮に,下の二つは第3鰓囊の上皮に由来する。また,副甲状腺は魚類以下の動物にはみられない。

 副甲状腺は,実質細胞である細胞索と血管を含む間質結合組織からなり,それらは結合組織性の被膜に包まれている。実質細胞は,主細胞と酸好性細胞の2種類に分けられる。酸好性細胞は多くのミトコンドリアが集合しているのが特色で,ヒトサルゾウウシヤギウマなどの大きい動物以外にはみられない。この細胞の働きについては現在あまりよくわかっていない。主細胞は,副甲状腺ホルモンを分泌していることが知られている。

パラトルモンparathormoneともいい,PTH略記。このホルモンは84個のアミノ酸からなるタンパク質である。主細胞中のリボソーム上でプレプロPTHとして合成された後,粗面小胞体腔の中に入ってプロPTHとなり,ついでゴルジ体に送られてPTHを含む分泌顆粒となり,開口分泌によって細胞外へ放出される。PTHは骨と腎臓に働き,血中のCa濃度の上昇と血中のPの低下をひき起こす。すなわち,骨からのCaやPなどの塩類の溶出を促進するとともに,腎臓でのビタミンD活性化の促進により腸管からのCaとPの吸収を増加し,さらに,腎尿細管でのCaの再吸収促進とPの再吸収抑制を行うのである。なお,このホルモンの分泌は,カルシウムイオンCa2⁺濃度低下により亢進するが,これと拮抗するものに,甲状腺濾胞傍細胞から分泌されるカルシトニンcalcitonin(チロカルシトニンともいい,32個のアミノ酸からなる)があり,これには血中Ca2⁺降下作用がある。

副甲状腺の機能の異常によりCaとPの代謝異常が起こる。これには,高カルシウム,低リン血症を招き,悪心,嘔吐,食欲不振,口のかわき,脱力をもたらす副甲状腺機能亢進症と,逆に低カルシウム,高リン血症を招き,神経興奮性が上昇して筋肉の痙攣(けいれん)が起こるテタニーtetanyなどの副甲状腺機能低下症とがある。機能低下症では,重篤な場合には,全身性痙攣(テタニー)により呼吸困難,窒息死を起こすことがある。このような機能低下症の治療にPTHは理論的には使用できるはずであるが,このホルモンは抗体ができやすく効力がなくなることと,供給が十分に行われないため,一般にはカルシウム剤(グルコン酸カルシウムなど),ビタミンDの大量投与で代用される。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「副甲状腺」の意味・わかりやすい解説

副甲状腺【ふくこうじょうせん】

上皮小体とも。脊椎動物の内分泌腺の一種。ヒトでは甲状腺の左右両葉の後面に,普通は左右2個ずつ上下の2対がある。およそ米粒大で,内部には数種の実質細胞が含まれる。分泌物である副甲状腺ホルモン(PTHと略記)は,破骨細胞の増加と活性化を通じて,血中のカルシウム濃度を上昇させる。機能低下は血液中のカルシウム濃度の低下をきたし,いわゆるテタニーを起こす。
→関連項目内分泌腺

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

家庭医学館 「副甲状腺」の解説

ふくこうじょうせんじょうひしょうたい【副甲状腺(上皮小体)】

 副甲状腺は、前頸部(ぜんけいぶ)、甲状腺の裏側にくっつくように、左右上下に1つずつ、計4個存在する、米粒大(こめつぶだい)ほどの小さなホルモン分泌腺(ぶんぴつせん)です。
 そこから分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨からカルシウムを吸収して血液中に動員し、腎尿細管(じんにょうさいかん)でのカルシウム再吸収を促進します。また、小腸(しょうちょう)ではビタミンD活性化作用を通じて、食物からのカルシウム吸収を増やし、血液中のカルシウム濃度を上昇させます。リンについては低下させます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

栄養・生化学辞典 「副甲状腺」の解説

副甲状腺

 上皮小体ともいう.甲状腺の左右に2個ずつある米粒大の内分泌腺.副甲状腺ホルモン(パラトルモン)を分泌する.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「副甲状腺」の意味・わかりやすい解説

副甲状腺
ふくこうじょうせん

上皮小体」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の副甲状腺の言及

【内分泌腺】より

…円口類には存在しない。(4)副甲状腺 鰓囊に起源をもつ内分泌腺で,動物によって数は異なる。魚類には存在しない。…

※「副甲状腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

《「晋書」杜預伝から》竹が最初の一節を割るとあとは一気に割れるように、勢いが激しくてとどめがたいこと。「破竹の勢いで連戦連勝する」[類語]強い・強力・強大・無敵・最強・力強い・勝負強い・屈強・強豪・強...

破竹の勢いの用語解説を読む