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胸腺 きょうせんthymus

翻訳|thymus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

胸腺
きょうせん
thymus

胸骨の後方,心膜および心臓大血管の前方にある葉状器官。扁平な三角形を呈し,大きく右葉と左葉が認められ,さらに多数の胸腺小葉に区別される。小葉は皮質髄質から成り,それぞれが上皮性の細網細胞と細網線維から構成されている。皮質にはリンパ球が密集し,リンパ球の生成に関係している。一方,髄質には胸腺小体があるが,その働きはよくわかっていない。思春期までの胸腺は,他のリンパ組織に対して成長促進ホルモンを分泌するといわれているが,内分泌腺としての機能は明らかではない。思春期以後は年とともに退化し,老人では脂肪塊となる。

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百科事典マイペディアの解説

胸腺【きょうせん】

脊椎動物の免疫器官。鰓嚢(さいのう)に起源をもち,T細胞の分化の場となる。ヒトでは,胸骨上部の直後にある,左右両葉からなる器官で,ペプチド性のホルモンを分泌し,これがT細胞の分化を促すとされる。
→関連項目内分泌腺白血球リンパ系

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世界大百科事典 第2版の解説

きょうせん【胸腺 thymus】

魚類以上のすべての脊椎動物に存在する免疫器官。鰓囊(さいのう)に由来し,T細胞の分化の場として役だっている。どの鰓囊から生じるかは,動物進化の程度によって異なっているが,組織構造は,ヒトの胸腺と類似点が多い。最下等の脊椎動物である無顎類(円口類)では,明確な胸腺は認められない。無顎類のうち,ヤツメウナギの幼生では,鰓囊上皮域にリンパ球の小集団があるが,これが原始胸腺であるとは断定できない。【村松 繁】
[ヒトの胸腺]
 ヒトの胸腺は胸骨の直後,心臓の前上方に位置する扁平な器官で,左右両葉に分かれるが,正中線でたがいに癒着している。

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大辞林 第三版の解説

きょうせん【胸腺】

脊椎動物のリンパ組織の一。ヒトでは胸骨上部の後ろ側にあり、リンパ球と網状の上皮細胞からなる葉状の器官。リンパ球の分化増殖に関与。ここで生成されたリンパ球を T 細胞と呼び免疫機能の中枢的役割を担う。思春期まで増大を続けるが、その後退縮して脂肪組織に置換される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

胸腺
きょうせん

内分泌器官で、免疫機能にも関与し、T細胞を全身に送っている。胸腔(きょうくう)の縱隔上方かつ胸骨のすぐ後ろで、心臓および心臓大血管の前方に位置する、全体として扁平(へんぺい)な三角状の器官で、左葉と右葉とに区別できる。外観は薄い赤みを帯びていて、柔らかい構造をしている。胎生後期から出生児では長さ5~6センチメートル、厚さ1~14センチメートル、重さ15グラムほどに成長し、思春期ごろまでさらに発達し(30グラム以上)、以後は急速に退化して脂肪塊の痕跡(こんせき)となる。
 内部構造は細網組織が基本となり周辺部の皮質と深部の髄質とに区別できるが、皮質部にはとくに未熟なT細胞が密在し、髄質部は著明な細網構造のなかに主として成熟したT細胞が存在している。この髄質部の中心部にハッサル(Hassall)小体とよぶ構造があり、この小体の働きはリンパ球の分化に役だつと考えられたこともあるが、詳細は不明である。
 胸腺の機能についてはまだ不明な点が多いが、動物実験などで、生殖腺を除去しておくと胸腺の退化が遅くなったり、性ホルモンの投与によって胸腺の退化が促進されることなどから、胸腺は生殖腺の支配を受けているとも考えられる。胸腺を早期に摘出しても内分泌作用に影響がないことから、内分泌機能よりもリンパ組織としての機能が考えられるようになった。胎生期には骨髄その他の造血器にあったリンパ芽(が)細胞が、胸腺に移って増殖するようになると考えられるようになった。胸腺で増殖するリンパ球をTリンパ球とよんでおり、このリンパ球(リンパ芽細胞)も生後間もなくリンパ結節に移動することが知られている。
 小児などで年齢不相応に、胸腺やリンパ結節など全身のリンパ組織が肥大し、心臓の血管などの発達が不十分な体質異状を胸腺リンパ体質という。この体質の人は成長発育の不全や生活力の低下を伴い、抵抗力が弱く、抜歯や注射などのわずかの外的刺激で障害を生じることもある。その他、バセドウ病、重症筋無力症、副腎(ふくじん)障害、白血病などのときにも、胸腺肥大がおこることがある。胸腺肥大の原因は副腎皮質障害ともっとも関係が深いことも指摘されている。[嶋井和世]

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世界大百科事典内の胸腺の言及

【内分泌腺】より

…この物質は血中に入り,血管や副腎皮質に作用するので一種のホルモンとみなされる。(13)胸腺 鰓囊起源である。骨髄でできたリンパ球が胸腺の中で,その分泌するサイモシンにより抗原反応性細胞(T細胞)となる。…

【ホルモン】より

…ただし,爬虫類,両生類,魚類では光の感覚器官として存在するので,〈腺〉ではない。(15)胸腺 サイモシン,サイモポイエチン,リンパ球増生因子などの物質が抽出されているが,ホルモンとして確認はされていない。(16)魚類尾部下垂体のホルモン アミノ酸41個のウロテンシンIと,アミノ酸が11個でS-S結合一つをもつウロテンシンIIがある。…

※「胸腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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