日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブキジャコウソウ」の意味・わかりやすい解説
イブキジャコウソウ
いぶきじゃこうそう / 伊吹麝香草
[学] Thymus quinquecostatus Celak.
Thymus serpyllum L. subsp. quinquecostatus (Celak.) Kitamura
シソ科(APG分類:シソ科)の草状小低木。日当りのよい山の岩場や草地、石灰岩地帯に多く、まれに海岸近くにも生える。茎は地表をはって所々に根を出し、枝は斜め上に伸び、高さ3~15センチメートル。葉はごく短い柄があり、対生し、卵形もしくは長楕円(ちょうだえん)形で全縁、長さ5~10ミリメートル。2~3対の羽状脈があり、両面に腺点(せんてん)がある。6~7月、枝先に短い花穂をつくり、淡紅紫色で小形の唇形花を密に数段つける。萼(がく)は5裂し二唇形、内面喉部(こうぶ)に白毛が多い。花冠は7~8ミリメートル。北海道から九州、中国、ヒマラヤなどに分布する。全体にチモールを含みよい香りがあり、伊吹山(滋賀県)に多いのでこの名がある。山草として鉢植えにしたり、薬用とすることもある。イブキジャコウソウ属は約200種あり、アジア、アフリカ、ヨーロッパに分布する。
[村田 源 2021年8月20日]