腸脛靭帯炎(読み)ちょうけいじんたいえん(その他表記)Iliotibial band friction syndrome

六訂版 家庭医学大全科 「腸脛靭帯炎」の解説

腸脛靭帯炎
ちょうけいじんたいえん
Iliotibial band friction syndrome
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)は、膝の近くでは丈夫な筋膜となって脛骨(けいこつ)に付着します。この筋膜と大腿骨外側の突出上顆(じょうか))が摩擦を起こすことで痛みが生じる病気です(図41)。膝がO脚の人や、足関節が回外足など下肢のアライメント(骨や関節の並び方)に異常のある人の発症が多いとされています。また、発育期で骨の成長に筋、筋膜の成長が追いつかず、筋・筋膜の緊張が強い人にも症状が出やすいとされています。

 一般には、男性で長距離走を行う人の発症が多いので、ランナーズニーとも呼ばれています。典型的な使いすぎ(オーバーユース)症候群のひとつです。

症状の現れ方

 初期は、長距離を走ったあとに膝外側部に疼痛が生じます。進行すると膝の屈伸に伴って疼痛が生じてランニングは困難となり、さらに進行すると歩行や階段昇降などの日常生活動作でも疼痛が強くなります。

検査と診断

 ランニングに伴う膝外側の痛みであり、膝を軽く屈曲して腸脛靭帯を圧迫すると強い痛みが再現できる(グラスピングテスト陽性)場合にこの病気と診断されます。単純X線検査やMRI検査では通常異常を認めません。

治療の方法

 基本は保存治療で、急性期ではランニング(とくに下り坂の走行を禁止することが有効)の制限などで安静にし、アイシングを行います。ステロイド薬の局部注射は効果がありますが、腱の断裂誘因やドーピング陽性になるのですすめられません。

 多くの場合、トレーニングのしすぎによる発症であるため、安静にしていれば症状は軽快することが多いとされています。

 症状が強い場合や保存治療で再発を繰り返す場合には、腸脛靭帯のリリースや部分切除を行う外科的治療がすすめられます。

予防対策はどうするか

 予防としては、足底装具の装着や腸脛靭帯と股関節周囲筋群のストレッチです。本症の発症後は、トレーニングメニューの変更やオーバートレーニングの防止が望まれます。

関連項目

鵞足炎(がそくえん)

一戸 貞文


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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