腺熱,エーリキア症,アナプラズマ症

内科学 第10版 の解説

腺熱,エーリキア症,アナプラズマ症(リケッチア感染症)

(1)腺熱(sennetsu neorickettsiosis)
 中国地方以西の西日本で古くから知られた「腺熱」の病原体は,現在ネオリケッチア属(Neorickettsia)に分類されている(N. sennetsu).媒介動物は,魚類に寄生する吸虫であると推測されている.これまで欧米では報告されておらず,近年,日本でも腺熱の発生は認められないが,東南アジアにおける熱性疾患の一因として報告されている.腺熱は全身のリンパ節腫脹を伴う急性熱性疾患で,2~3週間の潜伏期の後,発熱悪寒をもって発症し,全身倦怠感,頭痛,筋肉痛,関節痛などを伴う.発熱は回帰性を示す.治療は,ほかのリケッチア性疾患と同様にテトラサイクリン系抗菌薬が有効である.
(2)ヒト単球エーリキア症(human monocytic ehrli-chiosis:HME)
 Ehrlichia chaffeensisをもつマダニの刺咬5~10日後,発熱,頭痛,筋肉痛,倦怠感,悪心,下痢白血球減少,血小板減少などを呈する.発疹はまれである.不適切な治療や易感受性宿主では,発熱の継続,腎障害,DICなど重症化し,死亡することもある.特徴的症状がなく,ほかの熱性感染症との臨床的鑑別は難しい.テトラサイクリン系,マクロライド系,ニューキノロン系抗菌薬が有効.欧米では多数の患者が発生しているが,わが国ではE. chaffeensis近似のものがマダニなどから検出されているものの,ヒトへの病原性は不明である.
(3)ヒト顆粒球アナプラズマ症(human granulocytic anaplasmosis:HGA)
 1994年,米国で発熱患者の好中球のなかにエーリキア様の細菌感染が認められた.遺伝学的解析から,ヒツジウマの顆粒球エーリキアと同一種のAnaplasma phagocytophilumによる熱性感染症とされている.マダニが媒介し,米国での保菌動物は,おもにシロアシネズミであると考えられている.媒介マダニはLyme病を引き起こすボレリア属の細菌も媒介するため,混合感染が指摘されている.国内でもA. phagocytophilumが検出されているものの,その実態は不明のままである.[安藤秀二]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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