マダニ(読み)まだに(英語表記)tick

翻訳|tick

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マダニ」の意味・わかりやすい解説

マダニ
まだに / 真蜱
tick

節足動物門クモ形綱ダニ目マダニ亜目に含まれる大形吸血性ダニの総称。マダニ亜目は、マダニ科Ixodidaeとヒメダニ科Argasidaeおよびアフリカ産の特殊な1科で構成されるが、日本ではヒメダニ科のダニをみることが少ないので、マダニ科のみをさすことが多い(この場合の英名hard tick)。マダニ科のものは気門が第4脚後方にあり、それより後ろの後側縁は、12本の浅い切れ込みによって花彩とよばれる縁どりを形成するが、属によってはこれを欠く。体長2~7ミリメートル。褐色を基調としたものが多く、体前端に口器と触肢をもつ。鋸(のこぎり)状の口下片が口器中央に突出し、長期間にわたる吸血を確保する構造となっている。脚(あし)は4対で体腹面の前半にある。卵、幼虫(脚は3対)、若虫、成虫(脚はともに4対)の発育期があり、卵以外の各期に一度ずつ宿主に取りついて吸血し、満腹すると地上に落ちて脱皮する。ウシマダニ属では幼虫から成虫まで宿主体上にとまって脱皮する。雌成虫は一度咬着(こうちゃく)すると1週間以上、あるものは1か月以上も吸血を続け、満腹するまでは容易にとれず、無理に引き抜くとちぎれて口器の一部が皮膚に残る。雌は満腹すると著しく膨大し、コーヒー豆大になるが、雄は背面を硬い背甲板で覆われるため、大きくならない。満腹した雌成虫は数百ないし数千個の卵塊を地上に産んで死ぬ。日本の種類はほとんどマダニ属Ixodesとチマダニ属Haemaphysalisに属するが、キララマダニ属Amblyomma、ウシマダニ属Boophilus、カクマダニ属Dermacentor、コイタマダニ属Rhipicephalusの4属に属する若干種を加えると、約40種が生息している。吸血によって貧血や皮膚炎をおこすのみか、アメリカではロッキー山紅斑(こうはん)熱、極東、旧ソ連諸国および各地でウイルス性脳炎や、家畜のピロプラズマ症など各種の病原体を媒介する。日本では東北地方のキチマダニヤマトマダニが野兎(やと)病菌に汚染されていることがあり、注意を要する。日本種でヒトを刺すものには、ヤマトマダニ、シュルツェマダニ、タネガタマダニ、タカサゴキララマダニなど11種が知られている。

山口 昇]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マダニ」の意味・わかりやすい解説

マダニ
Ixodidae; hard ticks

クモ綱ダニ目マダニ科。雌の背板長は 1.2mm内外,雄では背板が胴全体をおおう。幼虫と若虫はネズミモグラなどの小型哺乳類に,成虫はウシ,ウマなどの大型哺乳類に寄生する。一般に卵,幼虫,若虫,成虫の4期から成るが,卵以外の各期ではすべて吸血する。吸血後,脱皮や産卵のため宿主を離れるが,その後再び宿主につく。したがって各期が同時に宿主にみられる例も多い。おもに放牧地の家畜にとりついて各種の伝染病を媒介するが,人間への寄生例も知られている。日本,東南アジア,インドなどに分布する。フタトゲチマダニ Haemaphysalis longicornisなど種類が多い。 (→ダニ類 )

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