改訂新版 世界大百科事典 「腺疫」の意味・わかりやすい解説
腺疫 (せんえき)
strangles
ウマの急性伝染病で,上部気道の炎症と付属リンパ節の化膿を伴う。原因菌は腺疫連鎖球菌Streptococcus equiで4~8日の潜伏期の後,体温が上昇し,食欲はなくなり,鼻汁を多量に垂らす。頭部リンパ節の腫大,下肢部にリンパ管炎が波及することがある。この病気は冬季あるいは高湿時に好発するが,ウマの輸送や移動で影響を与える。感染馬の鼻汁が,牧草や飼槽や水槽を汚染することで感染が広がる。この病気は世界的に広く発生したが,ウマの集団的移動(軍事的)などが減少してから,あまり重要視されなくなった。死亡例はまれであり,死後検査で肝臓,脾臓,肺臓,肋膜,大血管および腹膜に化膿性病巣が見受けられる。予防としては患馬を隔離し,舎内を消毒し,床わらは焼却する。手入れ用具も消毒する。治療はペニシリンを病気の早期に投与すれば,きわめて適切である。ワクチンもしくは抗血清は現在では製造されていない。
執筆者:本好 茂一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報