改訂新版 世界大百科事典 「臍帯脱出」の意味・わかりやすい解説
臍帯脱出 (さいたいだっしゅつ)
prolapse of the cord
分娩時に卵膜が破れ(破水),臍帯が胎児より先に下降し,破れた卵膜から腟内へ脱出することをいう。臍帯は子宮壁と胎児の間に挟まれて臍帯血行が止まり,このために胎児は急速に酸素の供給がなくなり,無酸素症から胎児仮死,そして死亡する。しかし母体にはまったく症状がないため,これに気づかない。そこで臍帯脱出を早期にみつけるために,破水時は胎児心音を聴取したり,分娩監視装置で監視が行われる。胎児の位置異常(骨盤位,横位),羊水過多症,未熟児,多胎妊娠,胎児死亡,前期破水,早期破水,過度に長い臍帯,臍帯が胎盤下部に付着している場合などに起こる。臍帯脱出が起こったときは,できるだけ早く帝王切開して児の救出に努める。一般に正常な頭位分娩や初産婦の分娩では,帝王切開を行っても,臍帯の圧迫される程度が強いため,児死亡が多く予後不良である。しかし骨盤位,横位,経産婦では臍帯圧迫の程度が軽いため,生児を得ることもある。
執筆者:室岡 一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報