多胎(読み)タタイ(英語表記)multiplet

デジタル大辞泉 「多胎」の意味・読み・例文・類語

た‐たい【多胎】

二人以上の子供を同時に妊娠していること。

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精選版 日本国語大辞典 「多胎」の意味・読み・例文・類語

た‐たい【多胎】

  1. 〘 名詞 〙 二人以上の胎児を同時に受胎すること。

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改訂新版 世界大百科事典 「多胎」の意味・わかりやすい解説

多胎 (たたい)
multiplet

多生児ともいう。哺乳類の妊娠において,複数の胚が同時に着床して発生を進行している場合に多胎(双胎,三胎,四胎など)であるという。出産に至れば,双子,三つ子,四つ子などと呼ばれる。自然の生殖過程として多胎が生ずる場合と,一般に単一胚による妊娠が正常であると考えられる種に偶発的に生ずる場合とがある。ヒトにおける多胎は後者である。

 齧歯(げつし)類には1回の産子数の多いものが多い。ラットやマウスの1回の分娩(ぶんべん)における子数はだいたい6匹前後であるが,個々の分娩について見ると,10匹以上に及ぶことも少なくない。

 脳下垂体ホルモンである生殖腺刺激ホルモンを,適当な組合せ(通常FSHとLHを組み合わせる)で雌動物に投与すると,過剰排卵という現象を起こす。すなわち,卵巣から正常の排卵数をはるかに超える数の卵子が放出されるのである。このような動物を交配すると,正常の着床数をはかるに超える胚の着床が起こる。過剰多胎superfetationとか,過剰妊娠superpregnancyと呼ばれる現象である。過剰多胎や過剰妊娠にあっては,子宮内における胎児の過密のため,しばしば胎児の死亡や再吸収が起こり,産子数はそれほど多くならない場合が多い。
執筆者:

ヒトは1回の妊娠で通常ひとりの胎児を宿す,つまり単胎であるが,多胎そのものが異常というわけではない。しかし,進化の過程で,ひとりの胎児を宿すのに至適なように,子宮内環境をはじめとする母体条件が整えられており,このため胎児,母体とも多胎に適応できず問題が起こるのである。

 多胎には,複数個の卵が排卵,受精,着床して起こる場合(双胎の場合は二卵性双胎にあたる)と,1個の受精卵が複数個に分割し,それぞれが発育,着床して起こる場合(双胎の場合は一卵性双胎にあたる)がある。また両方の機序が組み合わされて起こることもある。例えば,四胎は1~4個のいずれの数の卵をも起源としうる。なお,動物発生学の分野では,一つの卵から二つ以上の胚が生ずる場合を多胚としているが,医学の分野つまりヒトでは,上記のように,成因いかんにかかわらず,複数の胚が同時に発生し,やがて出産される場合を多胎といっている。

 多胎の頻度は,地域,人種や母体の年齢,分娩回数,遺伝的背景などにより異なるが,一般的にはn胎の場合,1/80n1にほぼ近似とされる。脳下垂体から分泌される生殖腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)は,ある種の無排卵性の不妊症婦人に有効であるが,卵胞に直接作用するところから複数個の排卵(過剰排卵または過排卵)を誘発することが少なくない。最近,諸外国や日本で話題となった五つ子の大半は,このゴナドトロピンによる排卵誘発によって起こっている。現在,排卵誘発剤の投与量や投与法をくふうして多胎が起こらないようにする努力がなされている。

 また近年,体外受精に際し複数個の受精卵を子宮内に移植する場合があり,それによる多胎も報告されている。しかし,過剰排卵にせよ複数個の受精卵移植にせよ,その一部は着床までの過程で淘汰されるのですべてが多胎になるわけではない。まれにではあるが,子宮内と子宮外に別々の胎芽が着床したり,複数個の胎芽が子宮外に着床することもあるが,一般に多胎と呼ばれているのは子宮内妊娠に限られる。

 多胎の妊娠,分娩の最大の問題点は早産である。複数以上の胎児によって,子宮は妊娠週数に比して過大に伸展され,陣痛が早期に発来しやすい。一般に胎児数が増えるほど早産しやすく,またその時期も早くなる。早産に加えて,限られた子宮内環境のため,個々の胎児の発育は抑制されるので,未熟児として産まれることが多い。また,妊娠中毒症や羊水過多を合併したり,胎児奇形を伴うこともあり,単胎に比してその周産期死亡率は高い。

 分娩時には,子宮の過伸展により微弱陣痛や遷延分娩を起こしやすい。また,まれにではあるが,骨盤内で胎児どうしがからまりあって懸鉤(けんこう)と呼ばれる状態になり,分娩が停止することもある。一般に第1児(最初に娩出される児)の予後は第2児以降に比してよい。これは,第1児娩出後子宮がある程度収縮するために,胎盤早期剝離や臍帯(さいたい)脱出を起こし,第2児以降が仮死になりやすいからである。
多胚 →排卵誘発薬 →双子
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多胎」の意味・わかりやすい解説

多胎
たたい
multiple pregnancy

2個以上の胎児を同時に胎内にもつ状態をいう。双胎は比較的多いが,まれには3胎とか4胎という例もあり,数が多くなるにつれて頻度は低くなるが,安産して生存する例もある。最近では,排卵誘発剤の使用により3胎以上の多胎が増加の傾向にある。多胎の場合には妊娠や分娩時の合併症が起りやすい。

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世界大百科事典(旧版)内の多胎の言及

【出産】より

…平均妊娠期間は,ヒトでは平均280日であるが,動物では表1のとおりである。
[胎児の数による分け方]
 胎児の数により,胎児1人を分娩するのを単胎分娩,胎児が複数のときを多胎分娩(3人を3胎または品胎,4人を4胎または要胎,5人を5胎など)といい,9胎分娩までの報告がある。多胎分娩の頻度としてはヘリンの式があり,n胎は単胎分娩80n-1に対して1回みられる。…

※「多胎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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