自動化船(読み)じどうかせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自動化船」の意味・わかりやすい解説

自動化船
じどうかせん

コンピュータによって機関、航法、荷役などの各システムの全部または一部を集中制御する船舶

[飯島幸人]

自動化の歴史

(1)人手不足に対処する省力化 1950年代から世界経済は成長期に入り、船舶量が増加し、それに伴って船員の需要も増大した。しかし各産業でも雇用が増え労働条件も向上したために、各国とも船員不足が重要な問題となった。初期の自動化はこの船員不足に対応して、従来人力で行っていた作業を機械に置き換える目的で始まった。61年(昭和36)完成の貨物船金華山丸が、主機関を機関制御室から操作するシステムを完成して世界的に注目された。

(2)船舶巨大化への対策 経済成長とともに石油消費量が激増し、オイルタンカーの大型化が始まる。巨大船の安全と能率運航のための自動化、荷役作業の効率化のための集中制御が必要となった。

(3)コンピュータ制御による自動運転 64年セルマダン号による機関室の夜間当直の廃止が実現し、69年には鉱油兼用船ジャパン・マグノリアが初めて機関室を無化したM0(マシナリー・ゼロ)の船級を獲得した。

(4)省エネルギー時代 オイル・ショックによって石油価格が高騰し、船舶運航費が従来の数倍に跳ね上がった。したがって、経済的に船舶を運航するための自動化が追求された。以上のいずれの段階でも、なんらかの新しい方法、システムを導入した船を自動化船とよんできた。

[飯島幸人]

現状と展望

通称近代化船とよばれる船舶では、これまでの航海士と機関士とを兼ねた運航士が乗り組むことができる。ただし、機関室無人化の基準に適合し、衛星航法装置、自動操舵(そうだ)装置その他を備えていることが条件とされている。そして無人化機関室、衛星航法装置などの自動化設備は、船舶自動化設備特殊規則によって具体的かつ詳細に規定されている基準を満たさなければならない。現状では、上記の条件に適合する船が法的な自動化船といえるが、船舶の自動化の速度は急速である。すべての情報を船橋に集中して情報処理を行い、気象海象などの条件も加えて、もっとも安全・経済的・短時間に目的地に到達する航路を選択して航行する、本当の意味の自動化船の研究も進んでいる。

[飯島幸人]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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