日本大百科全書(ニッポニカ) 「船舶抵当権」の意味・わかりやすい解説
船舶抵当権
せんぱくていとうけん
船舶を目的とする一種の抵当権。船舶抵当権は登記船(総トン数20トン以上のもの。商法686条2項)についてだけ認められ、不動産の抵当権に関する規定が準用される(同法848条)。船舶抵当権は船舶先取(さきどり)特権より後順位に置かれる(同法849条)。しかも船舶の航行に伴って船舶先取特権が続出するために、船舶抵当による資金調達の方法は困難となり、船舶抵当権者の利益が害され船舶金融としては問題が多い。そのうえ、船舶は消耗しやすいばかりでなく、価格の変動もあり、海上危険につねにさらされているから、債権者の保護にとって十分でなく、船舶抵当制度は日本ではあまり利用されていない。1967年の「海上先取特権および抵当権に関するある規則の統一のための国際条約」の改正草案が85年の万国海法会第33回の国際会議で採択された。
[戸田修三]