蓄積腎(読み)ちくせきじん(英語表記)kidney of accumulation

改訂新版 世界大百科事典 「蓄積腎」の意味・わかりやすい解説

蓄積腎 (ちくせきじん)
kidney of accumulation

卵殻中の胚や冬眠中の動物または排出に多くの水を使えない動物では,老廃物,特に窒素代謝産物を体外に排出することができないので,それらを不溶性の物質とし,体内の代謝系から除き蓄積・貯蔵するが,これにかかわる器官を蓄積腎と呼んでいる。必ずしも排出を専門にする器官とはいえず,各種の器官や組織あるいは細胞の副次的機能として行われている場合も多い。

 爬虫類鳥類の胚では窒素代謝産物を無毒で不溶性の尿酸結晶とし尿膜中に蓄積し孵化(ふか)のとき卵殻内に残す。軟体動物のうち陸生の腹足類でも卵中の胚では尿酸量が多く,また冬眠中に腎管内に多量の尿酸が蓄積する。一般に昆虫では血リンパ中の尿酸濃度は幼虫におけるよりさなぎにおけるほうが高く,脱皮の際それらの窒素代謝産物を脱皮殻とともに捨て去る。昆虫類はマルピーギ管で尿酸を排出するが,体内の脂肪体細胞も尿酸を蓄積するので尿酸細胞urate cellと呼ばれている。

 クモ類の多くは窒素の代謝産物をグアニンとして排出するが,一部の腸管細胞はグアニンを蓄積する。グアニンは魚類体表や腹腔壁のグアニン細胞guanophoreによっても蓄積され体表に真珠光沢をもたらす。プテリン類の色素も窒素を含む一種の代謝産物で,昆虫の体表とくにチョウの鱗片に沈着する。さらに,植物細胞内の各種の結晶体も,動物の蓄積腎と同様代謝産物の蓄積したものと考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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