岩石学辞典 「藍閃石相」の解説 藍閃石相 合成実験の結果から,500MPa(5kbar)以上の高圧力と250~400℃の中程度から低い温度条件下で形成された変成相と考えられる[Eskola : 1920].藍閃石片岩相には藍閃石が広く含まれているが,藍閃石片岩相に常に藍閃石が含まれているとは限らず,一方藍閃石の出現はこの相にのみ限定されることはないので,多少混乱がある.この相の中で藍閃石を含まない岩石にはローソナイト,アラゴナイト,翡翠(ひすい)輝石などが含まれる特徴がある.このような理由でウィンクラーはこの相をローソナイト藍閃石相とした[Winkler : 1965].ローソナイトが翡翠輝石と石英と共に産出するのがこの相である.Na角閃石とパンペリアイトは普通に産出し,曹長石は翡翠輝石と共存する.この相に含まれる多くの岩石は片状ではない.現在は青色片岩相(blue-schist facies)と同様に用いられている[Ernst : 1963, Bailey, et al. : 1964].なお純粋なCaCO3は高圧条件でアラゴナイトが形成される[Jamiesen : 1953, Simons & Bell : 1963].地表の温度圧力条件では方解石がアラゴナイトよりも安定であるが,常温常圧の水溶液にMgイオンが溶存していると方解石の形成が阻止されてアラゴナイトが形成される[北野 : 1990].天然の系は複雑なので,単純な実験系を直ちに変成相に適用するには注意が必要である.藍閃石の形成には以前から議論があり,野外では蛇紋岩などの超塩基性岩の貫入岩体の周囲に異常に多くの藍閃石などNa-鉱物が含まれていることが報告され,Na-交代作用が主張されている[Suzuki : 1933, 1934, 1939, Suzuki & Suzuki : 1959, 鈴木 : 1970, Taliaferro : 1943, Turner & Verhoogen : 1951].藍閃石片岩相の考えは温度圧力など外部条件のことで,一方交代作用は化学組成の増減であり両者の観点は異なる.変成相の考え方では交代作用があってもなくても構わないが,局所的に交代作用が著しい変成岩の場合には化学組成の変化を考慮する必要がある. 出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報