蛇紋岩(読み)ジャモンガン(その他表記)serpentinite

翻訳|serpentinite

デジタル大辞泉 「蛇紋岩」の意味・読み・例文・類語

じゃもん‐がん【蛇紋岩】

蛇紋石主成分とする岩石。暗緑色ないし緑色で、すべすべした感じがある。橄欖岩かんらんがん輝岩が変質してできる。肥料の原料、装飾石材とする。

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精選版 日本国語大辞典 「蛇紋岩」の意味・読み・例文・類語

じゃもん‐がん【蛇紋岩】

  1. 〘 名詞 〙 蛇紋石を主成分とする岩石。橄欖(かんらん)岩、輝岩などが変質したものが多く、緻密(ちみつ)でつやがあり、黒・暗緑色などを呈する。滑石、方解石、輝石、磁鉄鉱などが美しい模様を生じ、装飾用、建材に用いられる。〔日本風景論(1894)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「蛇紋岩」の意味・わかりやすい解説

蛇紋岩 (じゃもんがん)
serpentinite

主として蛇紋石よりなる岩石。カンラン岩などの超塩基性岩が変質して生じる。もとのカンラン石,輝石,クロム鉄鉱などが残っている場合が多い。カンラン石が蛇紋石に変わる際,鉄分を磁鉄鉱として晶出させるが,ときには自然鉄や鉄-ニッケル合金(アワル鉱)などの非酸化物を生じることがあり,蛇紋石化が還元的条件で起こることを示す。変質鉱物はほかに,条件によって滑石,ブルーサイト,透セン石,緑泥石などが伴われる。蛇紋岩が熱変成作用や広域変成作用を受けた場合には,鉄分が少なく,マグネシウムに富む透輝石,直セン石,エンスタタイト,カンラン石などができる。蛇紋岩は,高圧型変成帯や深部断裂帯に産出し,一般に深部で形成された変成岩や,地殻深部~中部の岩石を大小のブロックとして包有する。このような産状を蛇紋岩メランジュと呼ぶ。この形成は海洋地殻-上部マントル海洋リソスフェア)のサブダクションに関連していると考えられている。海洋地域ではトランスフォーム断層に伴う断裂帯から多量の蛇紋岩が採集されており,海洋地殻下の上部マントルが超塩基性岩よりなることを裏づけている。オフィオライトの一部は古い海洋リソスフェアの断片であるが,下部層の超塩基性岩は蛇紋岩になっていることが多い。

 蛇紋岩帯中にはクロム鉄鉱鉱床や,風化変質によって形成されたニッケル鉱床などがある。岩石は一般にもろく,くずれたり流動しやすい性質のため,蛇紋岩地域は地すべりが多く,また道路やトンネル工事の際に大きな障害になる。日本の代表的な蛇紋岩産地は,北海道神居古潭(かむいこたん)帯,西南日本内帯各地である。
執筆者:

蛇紋岩と呼ばれる装飾用石材は,蛇紋岩それ自体である場合よりも,方解石を多量に含んだ蛇灰岩であることが多い。濃緑の蛇紋石の地に,方解石から成る白い不規則な網目模様が入り,磨けば非常に美しい。石材業界では,このような火成岩起源のものも緑色の“大理石”として扱っている。石材としての蛇紋岩の産地にはイタリア北西端のアオスタ州,エーゲ海ティノス島,アメリカのバーモント州などがあり,装飾用として特に珍重された。日本では埼玉県秩父郡皆野町に良材を産するが,色や柄が日本人の好みに合わないのか,それほど使用されていない。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蛇紋岩」の意味・わかりやすい解説

蛇紋岩
じゃもんがん
serpentinite

ほとんど蛇紋石だけからできている岩石。暗緑黒色、青緑色、黄緑色で樹脂状光沢をもつ。方解石などの炭酸塩鉱物が細かい網状の脈をなすことが多く、蛇の皮に似た模様を示すので蛇紋岩とよばれる。超苦鉄質岩(橄欖(かんらん)岩や輝岩)の橄欖石や輝石が水分と反応して蛇紋石に変化した結果できた岩石である。蛇紋石族には、リザーダイトlizardite、クリソタイルchrysotile、アンチゴライトantigoriteがある。低い温度で反応してできた蛇紋岩はリザーダイトを主とし、中程度の温度で反応してできた蛇紋岩はアンチゴライトを主とする。橄欖石や輝石が完全には蛇紋石に変化しないで残っていることがある。クロム鉄鉱、クロムスピネル、磁鉄鉱を少量含む。

 蛇紋岩は、(1)層状貫入岩体の一部分である超苦鉄質岩の層が変化したものと、(2)構造線沿いに、広域変成岩に伴って帯状の岩体として産するものとがある。(1)の例はアメリカ合衆国モンタナ州のスティルウォーター複合岩体が有名。(2)の例は、日本では北海道の神居古潭(かむいこたん)変成帯や、四国の三波川(さんばがわ)変成帯、外国ではオーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州東海岸のグレート・サーペンティナイト・ベルト(大蛇紋岩帯)、イギリスのコーンウォール半島リザード岬(みさき)、アルプス山脈などにみられる。蛇紋岩は銅、鉄、ニッケル、石綿、滑石の鉱床を伴うことがある。

 蛇紋岩は軟らかくて細工しやすいので、模様の美しいものは彫刻を施して装飾品に、また装飾用石材に用いられる。埼玉県秩父(ちちぶ)産の蛇紋岩は、方解石の脈が発達していて鳩(はと)の糞(ふん)のような外観を示すので鳩糞石(きゅうふんせき)とよばれ、最高級の石材であるが、現在ではほとんど産出しない。蛇紋岩はまた溶成リン肥の原料にもなる。

[千葉とき子]

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岩石学辞典 「蛇紋岩」の解説

蛇紋岩

アグリコラはオファイト(ophite)や多分オフィカルサイト(ophicalcite)を指して(serpentaria)と呼んだ[Agricola : 1546].蛇紋岩は蛇紋石を主成分とする岩石で,一般に橄欖(かんらん)岩が熱水変質作用によって形成されたと考えられている.蛇紋岩は超塩基性岩として扱われるが,既存の橄欖岩が後に変化したものとして変成岩として扱われた[Eskola : 1939].蛇紋岩は橄欖岩の変質したものと考えられていたために独立した岩石として使われず,serpentine-rockまたは簡単にserpentineと呼ばれていた[Harker : 1908].蛇紋岩化作用(serpentinization)という語があったが,serpentineという岩石名は使われていなかった[Tyrell : 1926].当時の代表的な教科書には蛇紋岩という岩石名は火成岩としては全く使用されていない[Shand : 1927, Tröger : 1935, Johannsen : 1938, Barth : 1952].その後岩石名として蛇紋岩が使用されるようになったが,鉱物名の蛇紋石と同じserpentineを岩石にも使用していた[Hess : 1955].1936年にロドチニコフは岩石名としてserpentiniteを提案したが,一般には用いられていなかった[Lodochnikov : 1936].当時は蛇紋岩と蛇紋石とをserpentine-rockとserpentine-mineralとして区別しており,現在のような意味で蛇紋岩(serpentinite)が使用されたのはターナーなどの頃からである[Turner & Verhoogen : 1951, Williams, Turner & Gilbert : 1954].現在では鉱物を蛇紋石(serpentine),岩石を蛇紋岩(serpentinite)と明瞭に区別している.ラテン語のserpensは蛇のようなという意味.日本語の蛇紋岩は1878年に和田維四郎が用いた[歌代ほか : 1978].

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蛇紋岩」の意味・わかりやすい解説

蛇紋岩
じゃもんがん
serpentinite

アンチゴライト,温石綿 (クリソタイル) ,リザーダイトなどの蛇紋石族鉱物を主成分鉱物とする岩石。磁鉄鉱,クロム鉄鉱,自然銅,アワルアイト,滑石などを多少含む。超塩基性ないし塩基性火成岩が初生変質作用,熱水変質作用などを受けて,マグネシウムに富む橄欖石,輝石,角閃石などが蛇紋石化したもの。新鮮な蛇紋岩は緑色を呈するが,原岩中の鉄含量が多いほど暗色を示す。造山帯からスピライトなどを伴って産することが多く,これらは地向斜堆積物中に貫入した超塩基性岩などが,海水などによる変質作用を受けて生成したものと解される。蛇紋岩は大きな断層線に伴って分布することがあり,風化して地すべりの原因となる。

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化学辞典 第2版 「蛇紋岩」の解説

蛇紋岩
ジャモンガン
serpentinite

蛇紋石を主要構成鉱物とする岩石.少量の磁鉄鉱クロム鉄鉱などを含む.暗緑~黄緑色で,炭酸カルシウムの網状脈を伴うことがある.かんらん岩が変成されてつくられる.蛇紋岩はリン鉱石と混合し,溶融して溶成リン肥として,また,装飾石材として用いられる.

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百科事典マイペディア 「蛇紋岩」の意味・わかりやすい解説

蛇紋岩【じゃもんがん】

ほとんど蛇紋石からなる岩石。黄緑〜暗緑色の緻密(ちみつ)な岩石で美しく,指に脂感を与える。ときに多量の方解石を白いまだら模様に含み,装飾石材として用いられる。カンラン岩に水が加わり,かつ構造運動でストレスが作用し,カンラン石が蛇紋石になってできる。この作用を蛇紋岩化作用という。
→関連項目鳩糞石

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世界大百科事典(旧版)内の蛇紋岩の言及

【蛇紋岩植物】より

…蛇紋岩の化学的・物理的特性を反映し,蛇紋岩地帯には特殊な植物が生育することが知られているが,蛇紋岩地帯に限って生育する植物が蛇紋岩植物である。ここでいう蛇紋岩とは,変質した超塩基性岩のほか,カンラン岩などの超塩基性岩そのものも含めた広義のものをさす。…

【石材】より

…特に教会など石造建築では,石灰岩,大理石と並んで多用されている。(5)石灰岩・大理石・蛇紋岩 石灰岩のうち美しい色や模様を示すものや,それが変成作用を受けて再結晶した大理石は,石材の中で最も美しいものである。きめが細かいうえに硬度が低く加工しやすいので,古くから建築用および装飾用石材,彫刻用の材料として利用されてきた。…

【超マフィック岩】より

…おもなものは,カンラン岩,パイロクシナイト,コートランダイト,エクロジャイト,キンバーライト,コマチアイトなどで,カンラン岩とパイロクシナイトは,カンラン石と斜方輝石と単斜輝石の量比により,図のように分類されている。カンラン岩が変質してできた蛇紋岩も超マフィック岩に含まれる。超マフィック岩の大部分は貫入岩,あるいはアルカリ玄武岩やキンバーライト中の包有物(捕獲岩)として産する。…

※「蛇紋岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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