日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィンクラー」の意味・わかりやすい解説
ウィンクラー(Clemens Alexander Winkler)
うぃんくらー
Clemens Alexander Winkler
(1838―1904)
ドイツの化学者。鉱山町フライベルクの生まれ。工業専門学校に通うかたわら、コバルト顔料を製造する父の工場で鉱物分析を身につけ、さらにフライベルク鉱山大学に学んだ。ニッケルやコバルトの精錬業に従事して、排出ガスに含まれる硫黄(いおう)酸化物に着目、硫酸の生成反応を研究した。1873年、母校の鉱山大学の分析および工業化学教授に就任。1875年には、合成染料工業に不可欠な原料である発煙硫酸の、接触法による製法を発表した。1886年、フライベルク産の銀鉱石を分析して新元素を発見し、ゲルマニウムと命名した。この元素は、メンデレーエフが周期律に基づいて予言したエカケイ素であることが認められ、周期律の正しさを確証するものとなった。そのほか、インジウムの研究、適定法や電気分析法の改良、また硫酸の研究においてガス分析法を改良するなど、分析化学に多大の貢献をなした。
[内田正夫]
ウィンクラー(Josef Winckler)
うぃんくらー
Josef Winckler
(1881―1966)
ドイツの作家。歯科医として働くかたわら、1912年、文学同人結社「ハウスニューラント職能人同盟」を設立。『鉄のソネット』(1914)などの詩集で世に出たが、本領は故郷ウェストファーレンの風土に深く根ざした小説にある。とくに代表作『気違いボンベルク』(1923)は諧謔(かいぎゃく)味豊かな現代の悪者小説(ピカレスク小説)として好評を博し、50万部を超えるベストセラーとなる。その他ナポレオンの末弟ジェロームを描いた歴史小説『ウェストファーレンの王』(1933)、ベートーベンの生涯の一挿話による『アデライーデ』(1936)など。第二次世界大戦後は郷土の雑誌の編集にも従事。53年ドロステ・ヒュルスホフ賞を受賞した。
[青木順三]