朝日日本歴史人物事典 「藤原陳忠」の解説
藤原陳忠
平安中期の受領。藤原元方と参議橘良殖の娘の子とも。正五位下。天元5(982)年3月,信濃守に在任しているから(『小右記』),このころのことであろう,『今昔物語集』に,任期を終えての帰路,谷底に落ちたが,あたりに密生している平茸を持てるだけ持って上ったので,郎等たちがあきれたという話を収める。「受領ハ倒ルル所ニ土ヲツカメトコソ」(受領は倒れてもただでは起きない)とは,陳忠のエピソードを紹介した編者の評言で,受領の貪欲さが示されている。舞台となった神坂峠(標高1595m)は岐阜,長野の県境にあり,長野県側に神坂神社がある。
(村井康彦)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報