日本大百科全書(ニッポニカ) 「格言」の意味・わかりやすい解説
格言
かくげん
人生の真理を簡潔にまとめ、訓戒または助言として有用なことば。金言、処世訓、箴言(しんげん)などともいう。『論語』に「格言成法」の語があり、法となるべき至言を格言としている。俗間に広く流布し、昔から言い伝えられているものを諺(ことわざ)、俚諺(りげん)という。英語のプロバーブproverbは処世訓を平明・簡潔に表現したもの。フランス語のマクシムmaximeは道徳律や人間の行動原理を簡明にとらえたもの。広義には、モットーmottoや警句(エピグラムepigram)なども含まれる。
全体的特徴は簡潔性、通俗性、教訓性、一面性、語呂(ごろ)のよさなど。エラスムス『金言集』Adagia編纂(へんさん)の意図は、古典世界の英知を結集する金言が、歴史感覚の復活に有用と考えたからである。格言は、釈迦(しゃか)、孔子、キリストら聖者、プラトン、セネカら賢者、シェークスピアやゲーテら優れた作家、透徹した洞察力のパスカル、ラ・ロシュフコーらに代表される。『旧約聖書』「箴言」の一節「柔らかな答は憤りを鎮め、激しい言葉は怒りを呼ぶ」にみられる対句表現も一つの特徴。たとえば「馬子にも衣装」に対し、「人は見かけによらぬもの」など正反対の表現に真理の一面性がみられる。国民性や習俗の違いによる多様性は比較文化論の対象となる。
[船戸英夫]
『『故事俗信ことわざ大辞典』(1982・小学館)』▽『『故事名言ことわざ総解説』(1975・自由国民社)』