日本歴史地名大系 「蝦夷・北蝦夷・千島地図」の解説
蝦夷・北蝦夷・千島地図
えぞ・きたえぞ・ちしまちず
七〇×一二五センチ 写図彩色 文政四年以後 北海道大学附属図書館蔵
解説 仮称。この地図は文政四年の松前藩復領以降に完成した実用蝦夷地図の特徴を示している。蝦夷島の輪郭は航海の目印となる岬を著しく誇張し、海岸の断崖なども突出させて絵画的に描いており、本来は実測図であった地図が誇張されて異様な印象を与える。カラフト島の形は間宮林蔵・松田伝十郎作製のカラフト島大概地図と類似した輪郭をもち、その北端部もアムール河口におかれているが、全体が著しく縮小されているのは実用図のせいであろう。そのことは概念的に描かれた北千島諸島およびカムチャツカ南端地方についてもいえることである。実用図としての特徴は、朱線で航路の方位と里程が記され、地名や河川などが道中案内図のような仕方で表示されているばかりでなく、地図の周りには松前から東西蝦夷地に至る地名と里程が連続して示されていることにも現れている。凡例では役所・会所・運上家・番屋・村落などの記号が説明されている。地図の左上隅には場所請負人村山家の黒印が押されており、この種の地図は蝦夷地各場所の漁業経営地に至る案内図として利用されていたのであろう。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報