蝦夷生計図説(読み)えぞせいけいずせつ

日本歴史地名大系 「蝦夷生計図説」の解説

蝦夷生計図説
えぞせいけいずせつ

八巻

別称 蝦夷産業図説・蝦夷島図説・蝦夷常用集 秦檍丸撰、間宮林蔵・村上貞助増補

成立 文政六年

自筆本 東京大学人類学教室

写本 市立函館図書館・国立公文書館内閣文庫

解説 アイヌの生活や産業、とくに器物の製作過程を多数の絵画を示しつつ解説した図説。蝦夷地詰の幕吏秦檍丸は、アイヌの実生活における生業について新たな図説を準備していたが、完成を見ずして文化五年に急逝した。遺稿は蝦夷地探検家として有名な弟子の間宮林蔵が引継いで増補に努めたが、地理調査の多忙のため中絶していたようである。そのことを惜しんだ蝦夷地に関係が深い幕府の高官遠山金四郎(景晋)の要請で、当時蝦夷地詰の幕吏となっていた檍丸の養子の村上貞助が完成したのが本書である。巻一(イナヲの部)、巻二(耕作の部)、巻三(続耕作の部)、巻四(造舟の部)、巻五(続造舟の部)、巻六(衣服の部)、巻七(居家の部)、巻八(ウカルの部)の八巻よりなり、それぞれについて多数の絵画と適切な解説がつけられている。本書は「蝦夷島奇観」とともにアイヌの生活・習俗を後世に伝え、その後のアイヌ絵の模範となったことによって民族学および絵画史上に不朽の価値をもっている。

活字本 日本庶民生活史料集成第四巻・平成二年刊

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蝦夷生計図説」の意味・わかりやすい解説

蝦夷生計図説
えぞせいけいずせつ

アイヌの風俗,習慣,生産技術などを詳細に図示した,近世アイヌ史料の一つ。村上島之丞 (秦檍丸) 撰,間宮林蔵増補,村上貞助の文化6 (1809) 年記の序文のある善本が東京大学理学部人類学教室にある。同内容のものが『蝦夷常用集』『蝦夷産業図説』『蝦夷人物享食図説』『蝦夷画帖』『蝦夷雑誌』『蝦夷風土器』『蝦夷国図説』などの名で写されている。家を建てる順序,その地方差を図解した1冊,木幣の作り方と種類の1冊,シュト (けんかに使う棒) の用法と種類の1冊,農業,貯蔵,調理の2冊,船の製法,種類,構造,操船法の2冊,衣服の製法と種類1冊の8巻より成る。正確な写生図に詳細な解説を付した蝦夷風俗画中の白眉である。同筆に成る『膃肭臍漁猟之部』『蝦夷髪鬚図説』が別に単冊として存する。

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