六訂版 家庭医学大全科 「術後肛門障害」の解説
術後肛門障害
じゅつごこうもんしょうがい
Postoperative anal disorders
(直腸・肛門の病気)
どんな病気か
肛門の手術後に起こった、さまざまな障害の総称です(表2)。構造的には肛門部の粘膜、皮膚、神経・筋肉、骨で障害が発生します。術後から患者さんは直腸粘膜脱、狭窄、変形、閉鎖不全、難治
多くは医師の経験不足、知識不足、時代遅れの治療、患者さんの不養生が要因になります。この障害を起こす原因となる手術は、ホワイトヘッド(氏)手術、痔瘻手術、
症状と治療
①ホワイトヘッド肛門
ホワイトヘッド手術とは、脱出する内外痔核を肛門管に対して帯状に全周性に切除して、肛門皮膚と直腸粘膜を環状に縫合するものです。
本来は、これで痔核は完璧に切除されて完治となるはずですが、早いもので3年、遅いと15~20年してから、肛門出血、粘膜脱出、肛門狭窄などが起こることがあります。このような状態をホワイトヘッド肛門といいます(図23)。
治療は、皮膚弁移動術や
②痔瘻術後肛門閉鎖不全
肛門周囲膿瘍(のうよう)、痔瘻手術で不用意な肛門
治療は、硬くなった肛門から括約筋を掘り起こし、肛門形成術(括約筋縫合)をすると、かなり括約機能が回復し、便がまっすぐに楽に出ます(図27)。
③術後肛門狭窄
肛門がゆるいのとは反対に、術後の肛門が硬くて狭く、出血、痛み、排便困難を起こしたものです(図26)。痔核手術後に生じることが多く、痔核切除の時、肛門上皮を取りすぎたことが原因です。
保存的治療が無効の時は、早めに外科的処置(皮膚弁移動術・皮下内括約筋切開術)を加えると有効です。いずれも、まずは手術をした担当医、肛門科専門医に相談してください。
松田 保秀
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報