日本大百科全書(ニッポニカ) 「被子器」の意味・わかりやすい解説
被子器
ひしき
子嚢菌類(しのうきんるい)の子実体(子嚢果)のうち、内部に子嚢を生ずる子実体で、子嚢殻ともいう。被子器は形態のうえから、次のように区別されることがある。口のあるとっくり形の子実体の内底に少数の子嚢を生ずるものを被子器とし、開口部のない球状で、内部に子嚢が散在(コウジカビ類)、あるいは子嚢が層をつくる(ウドンコカビ類)ものを閉子器として区別する。さらに、とっくり形の場合であっても、その開口部も子嚢のできる空所も、菌糸の成長によって最初から形成されるものを被子器とよび、開口部や空所が、菌糸組織の部分崩壊によってできるものは偽(ぎ)被子器とよばれる。この違いは分類学上重要視されるもので、前者は真正子嚢菌類の核菌類(タマカビ類など)の特徴、後者はクロイボタケ類などを含む小房(しょうぼう)子嚢菌類の特徴とされる。核菌類のバッカクキン類などには、高さ数センチメートル以上の柄(え)と頭部からなる子座(しざ)をつくるものもあり、頭部表層には多数の被子器(1ミリメートル以下の大きさ)が形成される。
[寺川博典]