補陀洛渡海(読み)ふだらくとかい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「補陀洛渡海」の解説

補陀洛渡海
ふだらくとかい

補陀洛とは普陀落とも書き,梵語の Potalakaのあて字で,インドの南海岸にある観世音菩薩の住む山とされ,南方浄土を意味する。あるいは中国揚子江近くの舟山列島の普陀山や洛迦山をそれと擬する場合もある。補陀洛渡海とは,その浄土に渡ることから,死後の極楽浄土への再生を願う行為としての,捨身行の1つである入水入定であり,水葬と入水往生から成る修行と解釈されている。日本でもこの名の霊地が信仰され,和歌山県熊野灘沖や高知県室戸岬沖,大阪府天王寺前の海などがそれとされてきた。なかでも熊野灘沖が最も南方にあたることから,和歌山県那智山にある青岸渡寺古くから補陀洛へ渡る出発の寺といわれている。那智川河口近くに建つ補陀洛山寺に残る『熊野年代記』には,平安末期から江戸中期までの間に海に乗出していった渡海上人に関する記載がみられる。このほか『平家物語』 (巻十「維盛入水」) や『吾妻鏡』などにも補陀洛渡海にまつわる話が登場する。

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