襷・手繦(読み)たすき

精選版 日本国語大辞典 「襷・手繦」の意味・読み・例文・類語

た‐すき【襷・手繦】

〘名〙
① 古代、神事奉仕の物忌みの標(しるし)として肩にかける清浄な植物繊維の紐。
書紀(720)神代上「天香山の真坂樹を以て鬘にし、蘿〈蘿、此をば比舸礙(ひかげ)と云ふ〉を以て手繦〈手繦、此をば多須枳(タスキ)と云ふ〉にして」
② 幼児の着物の袖を背にかけて結びあげる紐。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「今宮こもんの白き綾の御衣(ぞ)一かさねたてまつりて、たすきかけて〈略〉はひありき給ふ」
※源氏(1001‐14頃)薄雲「ただひめ君のたすきひきゆひ給へるむねつきぞ」
③ 和服の袖をたくしあげて活動しやすくするために、両肩から両わきへ斜め十文字形になるようにかけて結ぶ紐。
※虎明本狂言・煎物(室町末‐近世初)「きゃうげんはかまくくり、たすきかけ、上にかみしも、ゑほし、ちひさ刀」
④ 紐・線などを、斜めに交差させること。また、その模様。たすきがけ。
徒然草(1331頃)二〇八「経文などの紐を結(ゆ)ふに、上下よりたすきにちがへて」
杉戸、板塀(いたべい)などの上部に、細い木を斜め十文字形に打ち違え、飾りとしたもの。
※歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)四立「襷(タスキ)の入りし網代塀(あじろべい)
⑥ 漢字の構成要素の一つで、「戈」や「才」などに見られるような「ノ」。
壒嚢鈔(1445‐46)二「弋は夷力反。〈略〉是にたすきを加れば戈」
⑦ 「ほこづくり(戈旁)」の古称。〔落葉集(1598)〕
⑧ 一方の肩から他方の腰へ斜めにかける細い布。
⑨ 「たすきぞり(襷反)」の略。〔相撲講話(1919)〕
[語誌](1)記紀では「手繦」「手次」などと表記され、神事などの際、袖が供え物に触れるのを防ぐ手段として用いた。
(2)「襷」は国字。「二十巻本和名抄‐一二」に「襷裨 続斉諧記云織成襷〈本朝式用此字 云多須岐 今案所以音義未詳〉」とある。

た‐すけ【襷・手繦】

〘名〙
① 「たすき(襷)」の変化した語。〔浪花聞書(1819頃)〕
② (牛・馬の用いる「たすき」の意で) 鞦(しりがい)のこと。〔訓蒙図彙(1666)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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